【恒久停戦協議】アフガン政府とタリバン、将来像で溝

 爆発で死亡したソラブ君の父アガ・サイードさん(左)と母。ソラブ君の思い出を振り返り、泣き崩れた=2月22日、アフガニスタン・チャリカル(共同)
 爆発で死亡したソラブ君の父アガ・サイードさん(左)と母。ソラブ君の思い出を振り返り、泣き崩れた=2月22日、アフガニスタン・チャリカル(共同)
米国とアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが、昨年2月29日に和平合意を結んでから1年。合意に基づくアフガン政府とタリバンの恒久停戦協議は、将来の国家像を巡り、双方の意見の隔たりが大きく、進展は見通せない。今年4月末とした駐留米軍の撤退期.....
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 米国とアフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが、昨年2月29日に和平合意を結んでから1年。合意に基づくアフガン政府とタリバンの恒久停戦協議は、将来の国家像を巡り、双方の意見の隔たりが大きく、進展は見通せない。今年4月末とした駐留米軍の撤退期限が迫る中、アフガンでは戦闘や市街地での爆発が相次ぎ、治安回復はほど遠い。[br][br] ▽負の連鎖[br] 「現在の治安状況では米軍撤退に反対だ」。首都カブールで2月21日に警察車両を標的にした爆発に巻き込まれ、三男ソラブ君(8)を亡くした父アガ・サイードさん(47)が訴えた。[br][br] ソラブ君は脚が不自由な父に代わり、路上でガムを売るなどして生活費を稼いでいた。当局は報酬1500アフガニ(約2千円)をタリバンからもらって爆弾を起爆したと自供した男を拘束。カブールでは連日のように爆発が相次ぎ、貧しさと治安悪化の負の連鎖が影を落とす。[br][br] 「政府とタリバンは互いに妥協して平和を築いてほしい」。サイードさんは息子が最後に稼いだ120アフガニを握りしめて涙ぐんだ。[br][br] ▽集中[br] 国連によると、昨年戦闘などに巻き込まれ死傷した民間人は8820人。和平合意を受け、アフガン政府とタリバンが昨年9月に恒久停戦協議を始めて以降、死傷者はむしろ増加傾向にある。成果を急いだ米国のトランプ前政権が、タリバンとの協議でアフガン政府を蚊帳の外に置き、同政府が求めた「停戦」を合意に含まなかったことが一因だ。[br][br] 合意後、米軍を含む国際部隊への攻撃を見合わせているタリバンは戦力を対政府に集中。武力で圧力をかけることで、停戦協議での立場を優位にしたい思惑が透ける。[br][br] ▽隔たり[br] 停戦協議では、タリバンも参加する将来の国家体制を議論する段取りだが、双方の将来像の隔たりは大きく、一筋縄にはいかない。[br][br] 2001年に崩壊したタリバン政権下では女性の教育や社会進出などが抑圧された。現在のタリバンは女性の権利に対して柔軟な考えも示しているが、イスラム教の厳格な適用は求めており、市民や国際社会は警戒する。政府は、男女平等や表現の自由などを保障する民主体制の維持は譲らない構えだ。[br][br] 協議を巡っては、表面上、議題の整理に時間を要しているが、撤退延期も視野に入れるバイデン米政権の政策を見極めたいという本音が双方にある。タリバン元幹部のサイード・アクバル・アガ氏は、バイデン政権とタリバンとの対話が今後の鍵を握ると説明する。「撤退延期など一方的に合意をひっくり返せば、薄氷を踏む思いで進んできたプロセスは崩壊する」と警告した。(カブール共同=) 爆発で死亡したソラブ君の父アガ・サイードさん(左)と母。ソラブ君の思い出を振り返り、泣き崩れた=2月22日、アフガニスタン・チャリカル(共同)