【デジタル推進法案】逆境突破、看板政策頼み

 衆院本会議で、答弁のため立ち上がる菅首相。左は平井デジタル改革相=9日午後
 衆院本会議で、答弁のため立ち上がる菅首相。左は平井デジタル改革相=9日午後
菅義偉首相が改革の旗印と位置付けるデジタル改革関連法案が衆院で審議入りした。新型コロナウイルス対策や総務省幹部への接待問題を巡る批判をはね返し、逆境を突破するには看板政策が頼り。成立は国民にアピールできる実績となり、衆院解散への布石を打つこ.....
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 菅義偉首相が改革の旗印と位置付けるデジタル改革関連法案が衆院で審議入りした。新型コロナウイルス対策や総務省幹部への接待問題を巡る批判をはね返し、逆境を突破するには看板政策が頼り。成立は国民にアピールできる実績となり、衆院解散への布石を打つことも意味する。一方、将来の「デジタル先進国」実現への挑戦は緒に就いたばかり。数多くの課題が待ち受ける。[br][br] ▽相乗効果[br][br] 「世界に遜色のないデジタル社会を実現したい」。9日の衆院本会議。首相は法案の意義を繰り返し力説した。政権を取り巻く重苦しい空気から早期に転換を図りたい思惑がにじんだ。[br][br] 首相は昨年9月の自民党総裁選で「デジタル化推進」を掲げており、若者世代に訴求力を持つ政策と見定める。官房長官時代から持論とする携帯電話料金の引き下げも3月から本格的に始まり、“相乗効果”が生まれると踏む。[br][br] 伏線もあった。新型コロナ対応への不満を背景に、報道機関による世論調査で内閣支持率が相次ぎ続落した今年1月。自民中堅がデータを見せ「若者世代の支持が底堅い」と励ますと、首相は「政策で結果を出していけば反応してくれるはずだ」と応じた。[br][br] 政府高官は同法案を政権の金看板とした上で「成立すれば、政権浮揚につながる」とそろばんをはじく。[br][br] ▽道しるべ[br][br] 政権がデジタル改革関連法案に込めた意味はそれだけではない。 「法案審議入りを控え、衆院選への環境整備が一つ整いましたね」。首相周辺が今月上旬、一部の世論調査で再び支持率が不支持率を上回ったことを話題にしたところ、首相は笑みを浮かべた。[br][br] 無派閥出身で党内基盤が脆弱(ぜいじゃく)な首相にとって、9月の任期満了に伴う自民総裁選は大きな関門となる。総裁選前で勝機があるタイミングに衆院選に持ち込み、再選を勝ち取りたいのが本音だ。[br][br] 「政治家として結果を最重視する」(官邸筋)首相。同法案の行方は衆院解散への道しるべとなる。政権は今月中に衆院を通過させ、早ければ4月中旬ごろに成立させる段取りを描く。自民幹部は「そうなれば、総裁選の約束を果たしたことになる。選挙で国民の評価を聞くための条件を一つクリアしたと言える」と見立てる。[br][br] ただこうした計算も、新型コロナの感染状況によって左右される面は否定できない。首相に近い自民議員は「ワクチン接種計画に思わぬ混乱が生じれば、選挙どころではなくなる」と指摘する。[br][br] ▽省益[br][br] 新型コロナ対応で白日の下にさらされた日本のデジタル化の遅れ。同法案が成立しても挽回は容易ではない。[br][br] 成否の鍵を握るのは、中央省庁の職員と民間エンジニアらから成る「官民混成」の組織づくりをどう進めるかだ。民間人材は1月の先行募集で30人の枠に1400人を超える応募があったが、政府関係者は「好待遇とは言えない給与に比べて責任は重い。組織の核となる人材を集めるのは簡単ではない」と語る。[br][br] 人材を送り込む各省庁には、デジタル庁でポストを得て「省益」を確保しようとの思惑がのぞく。内閣官房幹部は「省庁別にポスト配分することはない」と予防線を張る。[br][br] 一方、国民の間には、個人データの漏えいなどが起きないか不安が付きまとう。デジタル化の負の側面をどう防ぐか。今後も難路が続く。 衆院本会議で、答弁のため立ち上がる菅首相。左は平井デジタル改革相=9日午後