【NTT高額接待問題】政権、後手対応でダメージ拡大

 総務省への接待問題を巡る参院予算委の主なやりとり(似顔 本間康司)
 総務省への接待問題を巡る参院予算委の主なやりとり(似顔 本間康司)
底なし沼の様相を見せる総務省幹部への接待問題で、菅義偉首相が新たなダメージを負った。自らに近く、政権の看板政策の携帯電話料金引き下げを主導してきた同省の高級幹部を更迭。不祥事が次々と発覚する中、官邸側の対応が後手に回った結果だ。同省調査のず.....
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 底なし沼の様相を見せる総務省幹部への接待問題で、菅義偉首相が新たなダメージを負った。自らに近く、政権の看板政策の携帯電話料金引き下げを主導してきた同省の高級幹部を更迭。不祥事が次々と発覚する中、官邸側の対応が後手に回った結果だ。同省調査のずさんさは否めず、国民の不信感は拡大するばかり。問題の背景には、旧郵政省官僚と通信業界の間で長年続いた根深い「特殊な関係」が浮かぶ。[br][br] ▽皮肉[br][br] 「(首相長男正剛氏が勤めていた)東北新社以外に接待はなかったというのはそもそも不自然。調査を尽くし、早く厳しい処分を下しておくべきだった」。8日付の谷脇康彦総務審議官更迭の報に接した官邸幹部は“ミス”をこう悔いた。[br][br] NTT側による谷脇氏らへの接待発覚は政権にとって想定外。東北新社の接待問題を巡り、山田真貴子氏の内閣広報官辞職で「一区切り」(自民党幹部)付いたと考えていた。8日の参院予算委員会で野党の追及を浴びた首相。「第三者の目を入れた徹底した調査をまずしっかりやっていただく」。武田良太総務相の責任を繰り返し問う立憲民主党議員にこう答えるのが精いっぱいだった。「官僚だけの調査は国民から理解されない」と危機感もあらわにした。[br][br] 政権側は打つ手が見当たらない。参院予算委で共産党議員が谷脇氏への接待により行政がゆがめられた可能性を問うと、武田氏は「確認できていない」と具体的説明を回避。共産議員は「否定はできないということだ」とたたみかけた。[br][br] 政府筋は「首相の力の源泉だった総務省が、逆に大きな足かせとなっている皮肉な巡り合わせだ」と焦りをにじませた。[br][br] ▽異質[br][br] 接待問題の渦中にあるNTT。電電公社が民営化され発足したが、今も国が約3割を出資し、総務省との結び付きには長い歴史がある。同省は絶対的存在で、役員異動や事業計画策定も認可が必要だ。NTTの子会社の関係者は「高級官僚や閣僚級の政治家と親密に付き合うことが経営幹部の仕事になる」と明かす。ある通信大手の関係者は「どこからが接待に当たるのかという線引きが曖昧だったのではないか」と推し量った。[br][br] NTTの澤田純社長が谷脇氏を2018年9月に接待した前月には、当時の菅官房長官が携帯電話料金には4割の引き下げ余地があると発言。通信行政のキーマンとして、菅氏から指示を受ける谷脇氏との会食で、発言の真意を探ることが重大な関心事だったのは想像に難くない。実際、谷脇氏は参院予算委で、18年の接待について「携帯電話料金は話題に出たと思う」と認めた。[br][br] 総務省は旧郵政省や旧自治省などが合併して創設された。旧自治省出身の中堅職員は「放送・情報通信の部局と業界との距離の近さは異質だ。仕事の在り方を抜本的に見直すべきだ」と厳しい視線を向ける。[br][br] ▽落とし穴[br][br] 「明らかに利益供与だ」。共産の小池晃書記局長は記者会見で、徹底追及を予告した。総務省だけの問題にとどめず、背景に首相の影響があったとの構図を国民に印象付ける狙いだ。立民幹部は「澤田社長には、谷脇氏にどんな働き掛けをしたのか国会で説明してもらう」と強調する。[br][br] 首相にとって、次々明るみに出る不祥事に小出し対応を迫られる最悪の展開。自民閣僚経験者はこう身構えた。「まだ予期せぬ落とし穴が待っているかもしれない」 総務省への接待問題を巡る参院予算委の主なやりとり(似顔 本間康司)