【地域の防災力強化】乏しい人員、業務は山積み

 香川県坂出市の防災研修=2020年10月(同市提供)
 香川県坂出市の防災研修=2020年10月(同市提供)
自然災害が激しさを増す中、小規模町村などでは、少数の職員が山積みとなっている防災関連業務をこなしている。人数を一定数確保できている自治体でも、担当職員の経験・知識不足という課題を抱えており、国が掲げる「地域防災力の強化」は容易ではない。 ▽.....
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 自然災害が激しさを増す中、小規模町村などでは、少数の職員が山積みとなっている防災関連業務をこなしている。人数を一定数確保できている自治体でも、担当職員の経験・知識不足という課題を抱えており、国が掲げる「地域防災力の強化」は容易ではない。[br][br] ▽重圧[br] 千葉県南東部にある人口7千人弱の睦沢町。町議会の本会議場で昨年11月、防災業務を1人で担当している総務課の麻生健介(あそうけんすけ)さん(37)が提出議案を読み上げた。[br][br] 麻生さんは入庁10年目。町議会の事務を手伝う「書記」を兼ねており、本会議は毎回のように出席する。他にも選挙管理委員会、自治会、消防、職員研修などを兼務。「台風シーズンは防災業務が多いが、議会や選挙があると、そちらが中心となる」といい、現在は今月下旬にある県知事選の準備に追われている。[br][br] 防災関連では、各種計画の策定が大きな任務。国が2013年末から求めている「国土強靱(きょうじん)化地域計画」の策定は、ようやく3月中の完了にめどを付けた。新型コロナウイルス流行を受け、4月以降は避難所運営や職員の初動を定めたマニュアルの更新が控える。[br][br] 「小さい町ならではの利点はある」と麻生さん。住民との距離が近く、他部署とも連携しやすい。一方で「自分が倒れた時、他の人で穴埋めできるのか、職場に迷惑をかけないか、プレッシャーがある」と話す。[br][br] ▽強化[br] 人員の乏しさ以外で自治体が頭を悩ますのは、災害対応の経験不足だ。対策として自衛官OBを防災部局幹部に充てることも多く、内閣府によると20年3月時点で、335自治体が376人を採用している。[br][br] 防災対策を担う内閣府は、自治体など公的機関の職員を受け入れる制度を設けている。3カ月と1年の2コースあり、参加者は13年度からの累計で243人。災害発生時は被災自治体に派遣するため「貴重な経験を積めた」との声が寄せられている。[br][br] 大規模災害の発生を見据え、防災担当だけでなく、全職員の災害対応力を強化しようと試みるのは香川県坂出市だ。危機管理の研修を積んだ職員を「スペシャリスト」に認定。指導者になってもらい、数年かけて全職員に防災知識を授ける取り組みを始めた。[br][br] 大規模災害時に自治体職員は、所属する部署を問わず対策本部に関わる。避難所運営を任され、被災者と接する場合もある。市幹部は「『防災担当ではないので』という言い訳は通用しない。全員に必要な知識と心構えを持ってもらうのが重要だ」と語った。 香川県坂出市の防災研修=2020年10月(同市提供)