【山田内閣広報官辞職】首相がお粗末対応、傷口拡大

 衆院予算委で立憲民主党の山井和則氏の質問に答弁する菅首相=1日
 衆院予算委で立憲民主党の山井和則氏の質問に答弁する菅首相=1日
菅義偉首相長男の正剛(せいごう)氏らによる総務省幹部接待問題は、山田真貴子内閣広報官の辞職に発展した。続投で逃げ切りを図る官邸のシナリオは覆され、明確な意思を示さなかった首相の「お粗末対応」で傷口が拡大。与党内から首相の一層の求心力低下を危.....
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 菅義偉首相長男の正剛(せいごう)氏らによる総務省幹部接待問題は、山田真貴子内閣広報官の辞職に発展した。続投で逃げ切りを図る官邸のシナリオは覆され、明確な意思を示さなかった首相の「お粗末対応」で傷口が拡大。与党内から首相の一層の求心力低下を危ぶむ声が漏れる。政権内に忖度(そんたく)が広がっているとの衆院予算委員会での野党の批判にも、首相は正面からの答弁を避け続け、問題意識の希薄さをうかがわせた。[br][br] ▽強弁[br][br] 「私の家族が関係し、結果として公務員が法律違反の行為をした。深くおわびする」。1日の衆院予算委。首相は淡々とした語り口で陳謝した。[br][br] 立憲民主党は山田氏辞職について首相を追い込む好機と判断。トップバッターの枝野幸男代表は「早い段階で手を打っていれば、病気の悪化もなかったかもしれない」と述べ、首相対応が拙劣だと追及した。人事権を振りかざす首相の「忖度させる政治」が官僚のモラル低下を招いたと詰め寄ったが、首相は「襟を正す」とかわした。[br][br] 立民の山井和則氏も「山田氏は首相の息子がいる会食の誘いを断ると左遷されるから、断れなかったのではないか」と提起。「政権の被害者の面もある」として、首相の責任をただした。だが首相は「承知する立場にない」と突っぱね続けた。[br][br] その後首相は、山田氏への対応が後手に回ったのではないかと官邸で記者団に問われたが「そう思っていない」と強弁。立民の江田憲司代表代行は取材に「首相は世間の当たり前が分かっていない」と非難した。[br][br] ▽風向き[br][br] 首相の影響力が強い総務省で、放送分野などの重要ポストを歴任した山田氏。首相は女性として初の内閣広報官に抜てきした自身の任命責任の焦点化を恐れたか、進退などを巡る判断を避けてきたのは否めない。[br][br] 首相は先週の時点で、「加藤勝信官房長官らに任せている」と周囲に説明。政権内からは「自主的に辞めてほしい」と促す声が出たが、加藤氏は「現職官僚の処分とのバランスが大事だ」と決断。2月24日の記者会見で山田氏が給与を自主返納すると明らかにした。[br][br] だが26日に風向きが変化。政権内で「民間より甘い対応では乗り切れない」(官邸筋)との意見が急速に強まった。接待側の放送事業会社「東北新社」が、二宮清隆社長の引責辞任と、正剛氏の統括部長職解任を発表したためだ。28日夜、山田氏が体調不良を理由に杉田和博官房副長官に辞意を伝達。首相は「やむを得ない」と受け入れた。[br][br] 自民党幹部は山田氏辞職について「首相は26日の緊急事態宣言の一部解除決定を受けて記者会見を開かず、『山田氏隠し』と批判を浴びた。それを見て自ら決断したのではないか」と見立てた。3月1日の衆院予算委でも、会見を見送った首相に対し「政治リーダーとして、国民に何を求めるのか伝える貴重な機会を逸した」(玉木雄一郎国民民主党代表)などと厳しい質問が相次いだ。[br][br] ▽負の連鎖[br][br] 立民の安住淳国対委員長は「首相が早い段階で決断しなかったことが、政治不信につながった」と記者団に強調。立民幹部は「首相は自ら泥沼にはまった」と皮肉った。[br][br] 政府高官は山田氏辞職を巡り「体調が原因だ」と説明するが、自民内では政権の先行きへの不安が漂う。閣僚経験者は危機感を隠さない。「見事な負の連鎖だ。国民の不満のマグマはたまるばかりだ」 衆院予算委で立憲民主党の山井和則氏の質問に答弁する菅首相=1日