八戸市と仙台市間の沿岸部を結ぶ三陸沿岸道路が全線開通すると、東北地方の高速物流ルートは、東北自動車道などを使う内陸部のコースと沿岸部のコースの2ルートが確立される。[br][br] 三陸沿岸道路の起点・終点となる八戸市はアクセス性が向上し、物流拠点としての地位も高まる。小林眞市長は「八戸には産業振興の面でも間違いなくプラスの影響が生まれる」とし、開通効果を最大限取り込む姿勢を強調する。[br][br] さらに、同道路は札幌―仙台間の物流にも大きな変化をもたらすとの見方もある。苫小牧―八戸間を結ぶフェリー航路と同道路を組み合わせた新たなルートが形成されれば、八戸が陸と海の結節点としての役割を増すことになる。[br][br] ◆ ◇[br][br] 札幌―仙台間のトラック輸送について、八戸市が2019年に実施した試算では、苫小牧―八戸間のフェリーと三陸沿岸道路を利用する「八戸ルート」と、函館―青森間のフェリーと東北自動車道を利用する「青森ルート」を比較した場合、八戸ルートのさまざまな優位性が浮かび上がった。[br][br] 例えばフェリーの乗船時間も含めた総移動時間は、青森ルート13時間10分、八戸ルート14時間55分で、青森ルートの方が1時間45分早く目的地に到着できるが、フェリー乗船料や高速料金、燃料費を含めた全体経費の比較では、八戸ルートの方が約1万6千円安い結果となった。[br][br] さらにドライバーの運転時間で見れば、フェリーの乗船時間が長い八戸ルートの方が、青森ルートよりも約2時間短く、休息時間も確保できる。[br][br] 冬期間は、内陸部と比べて降雪・積雪量が少ないというメリットもある。[br][br] 八戸市は、三陸沿岸道路の全線開通後、八戸ルートが選択され、八戸発着のフェリーの利用促進にもつながる可能性があると強調。今後も利点を前面に出し、八戸の優位性をアピールしていく考えを示す。[br][br] ◇ ◆[br][br] 開通効果に対しては、八戸港の港湾関係者も熱視線を送る。三陸沿岸道路の沿線には、釜石港や大船渡港など拠点となる港はあるが、交通アクセスの向上により、より多くの荷物がガントリークレーンや冷凍コンテナ用の電源が充実している八戸港に集まる可能性があるためだ。[br][br] 同港で荷役を担う八戸港湾運送(同市)の福山務専務は「どれだけ効果が出るかは全線開通後でなければ分からない」とした上で、「新たな道路や港の利便性が浸透すれば、利活用は活発化していくだろう」と予測。同港で国内外へのコンテナ貨物の取扱量が増えることなどを期待する。[br][br] 一方、全線開通後に同道路が積極的に使われるかどうかは、所要時間や料金だけでなく、休憩所の充実など総合的なサービスが重要との声もある。[br][br] 八戸―苫小牧間でフェリーを運航する川崎近海汽船(東京)の五戸佳浩八戸支社長は、全長359キロの同道路に休憩所などが6カ所しかない点を挙げ、「現段階では有事の代替路として見られている部分もある」と指摘。「今後、どれだけ利便性を高められるかにかかっている」と分析する。[br][br]連載(1)「変わる流れ」
https://www.daily-tohoku.news/archives/57475