日米蔵元「SAKE」対話 震災、コロナ禍乗り越え

 2020年2月、米ワシントンで開かれた会合で日本酒を振る舞う久慈浩介さん(左)(本人提供)
 2020年2月、米ワシントンで開かれた会合で日本酒を振る舞う久慈浩介さん(左)(本人提供)
日本と米国の蔵元が酒造りの魅力を語り合う新たな取り組み「SAKE対話」を始めた。新型コロナウイルスの流行で需要が激減した米国で、オンライン企画を通じて清酒の良さをアピール。東日本大震災で被害を受けた蔵元も参加し、逆境をはねのけようと誓った。.....
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 日本と米国の蔵元が酒造りの魅力を語り合う新たな取り組み「SAKE対話」を始めた。新型コロナウイルスの流行で需要が激減した米国で、オンライン企画を通じて清酒の良さをアピール。東日本大震災で被害を受けた蔵元も参加し、逆境をはねのけようと誓った。[br][br] ▽もっと浸透[br][br] 「かんぱーい」。2月下旬、定番の音頭で幕を開けたオンラインの対話イベントは、米首都ワシントンにある北米酒蔵同業組合と在米日本大使館が企画した。日本側は宮城、福島、長野各県の蔵元が参加。米南部テネシー州ナッシュビルやニューヨーク、ロサンゼルスからの米側と合わせ計6人が酒造りの苦労話や商品開発の工夫などを英語で熱く語り合った。初挑戦の越境座談会に、北米酒蔵同業組合の小西ウェストン社長(50)は「日本酒はもっと浸透する」と手応えを感じており、今後もオンライン企画を予定する。[br][br] 米国は長年、清酒の最大の輸出先だったがコロナで暗転。2020年は外食需要の縮小で輸出額が前年比で25%減り、景気回復が早かった香港、中国向けを初めて下回った。巨大市場の復活は日本酒の未来を左右する。[br][br] 「消費者が新しいものや異文化を受け入れてくれる」。仙台市の老舗「仙台伊澤家勝山酒造」が実家で、海外事業を担う伊澤優花さん(27)は留学中の7年前からニューヨークでレストランなどへの飛び込み営業を始めた。「店側のお酒への見識が高く、良いと実感してもらえれば小さな蔵こそブランドになれる」。地道な努力で、今や出荷額の25%が海外向けだ。[br][br] 10年前の大震災で蔵も甚大な被害を受けた。「地元に還元できる大きな人間になれ」。当時高校生だった伊澤さんらに校長がかけた言葉を胸に刻み、世界を巡る。[br][br] ▽成長にエール[br][br] 現地生産者の増加も、消費者の裾野を広げている。米国ではクラフトビールのブームで、10年代に全米各地にミニ醸造所が乱立。さらにはアリゾナ州の日本人蔵元をはじめ、清酒の生産を始める「米国発祥」の蔵元が相次いで誕生した。[br][br] 対話イベントに登壇したブライアン・ポーレンさん(39)が18年にニューヨークで創業した「ブルックリン・クラ」は代表格だ。金融マンだったが、すし屋で味わった熱かんがきっかけで地酒醸造を独自に研究。「特別なグラスも日本語も必要ない。シンプルに楽しんでほしい」と、その場で飲めるカウンターバーを設けた醸造所を開いた。[br][br] 「若くて情熱あふれる米国の蔵元たちは進化し続けている」。海外進出の先駆者である岩手県二戸市「南部美人」の久慈浩介社長(48)は「いつか米国発のSAKEが世界の最高賞を取る日が来るかもしれない」と好敵手たちの成長にエールを送った。(ワシントン共同) 2020年2月、米ワシントンで開かれた会合で日本酒を振る舞う久慈浩介さん(左)(本人提供)