東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被害が大きかった岩手、宮城、福島3県42市町村の9割で、震災前より人口が減ったことが10日、分かった。減少率は6%で全国の3・5倍のペースだ。高齢化が進み、働き手世代の流出も止まらない。日本社会が人口減少に向かう中で初めて迎えた巨大災害から11日で10年。人々が安心して長く暮らす古里が取り戻せるかが問われてきた。[br][br] 死者、行方不明、災害関連死は計約2万2千人に上る。住宅40万戸超が全半壊し、復興庁によると、計約4万1千人が今も避難中だ。原発事故で最大約1150平方キロに及んだ避難指示区域は除染で縮小したが、原則立ち入り禁止の帰還困難区域337平方キロが残る。国は復興へ、この10年で約37兆円を投入してきた。今後5年間は福島に重点化し、津波被災地は完了を目指す。[br][br] 人口減少率は2011年3月の震災直前を起点に、全国は20年9月時点で1・7%、42市町村は21年2月時点で6・0%。うち17市町村が20%超減少し、津波被災地では宮城県女川町の43%減、南三陸町37%減、岩手県大槌町30%減などが目立った。福島県の大熊町など原発周辺の4町は90%を超えた。未曽有の災害が追い打ちとなった形だ。[br][br] 一方、仙台市を中心とする4市町だけは人口が増加。働き手世代が都市部に流出し、被災地内でも二極化した。[br][br] 高齢化も進む。人口に占める65歳以上の割合が40%を超える自治体は、10年3月時点でゼロだったが、21年1月時点では9町村となった。[br][br] 共同通信の自治体調査によると、津波で被災し、かさ上げしたり区画を整えたりした約1038ヘクタールのうち3割超が用途未定のままだ。地元での住宅再建を諦めた人も。高台の宅地も分散し、居住範囲が人口に不釣り合いなほど広くなってしまった自治体が多い。[br][br] 被災地のまちづくりに詳しい東北大公共政策大学院の島田明夫教授(都市法)は「人口減少を前提とした復興を掲げられる首長が少なかった」と指摘。「地場産業などを生かし、身の丈に合った対策を取らなければ被災自治体が単独で生き残るのは難しい」と訴えた。