熟練ハンターの技伝授へ 国が若手育成に本腰

 研修会で捕獲されたイノシシ=2月、新潟県上越市(新潟県猟友会提供)
 研修会で捕獲されたイノシシ=2月、新潟県上越市(新潟県猟友会提供)
シカやイノシシなど野生鳥獣による農作物や生態系への被害が深刻化していることを受け、環境省は若手ハンターの育成に、2021年度から本腰を入れる。経験豊富なベテランが指導役として狩りの現場に同行し、知識や技術を伝授する制度を数カ所で試行。23年.....
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 シカやイノシシなど野生鳥獣による農作物や生態系への被害が深刻化していることを受け、環境省は若手ハンターの育成に、2021年度から本腰を入れる。経験豊富なベテランが指導役として狩りの現場に同行し、知識や技術を伝授する制度を数カ所で試行。23年度に全国規模での展開を目指す。[br][br] 「イノシシがふもとに向かったぞ。警戒して」。2月下旬、新潟県上越市の雪山。待機していた若手ハンターたちは、無線機から指示を受け取ると、散弾銃の引き金に手をかけ息を潜めた。[br][br] 新潟県猟友会が16年から開催する「ペーパーハンター」向けの研修会。チームワークで獲物を追い詰める巻き狩りで、イノシシなど3頭を捕獲した。約30人の参加者には30~40代が目立ち、女性の姿も。同会の池田富夫会長(71)は「『獲物を待つ緊張感が楽しい』といった感想が多く、狩りの醍醐味(だいごみ)を伝えられた」と語る。[br][br] 環境省によると、全国の狩猟免許所持者数は1975年度の約51万8千人から2016年度には約20万人へと落ち込んだ。高齢化が進むが、自然志向の高まりや狩猟を題材とした漫画などメディアへの露出などで近年、若い世代からも注目されるようになり、40代以下の新規取得者が増えている。[br][br] ただ、免許を取得しても狩りの現場で活動するハンターの数は伸び悩んでおり、若手の狩猟参加をいかに増やすかが課題となっていた。[br][br] 新制度では、必要なノウハウを持つ熟練のハンターを指導役に認定。若手を連れて現場に入り、獲物の痕跡の見つけ方や銃とわなの扱い、狩猟場所周辺の住民とのコミュニケーション方法などを目の前で実践してもらう。指導することが収入につながるような雇用の仕組みも検討する。[br][br] こうしたハンター育成の背景にあるのは、野生鳥獣による被害の拡大だ。農林水産省の試算では農作物への被害額は年間200億円前後。捕獲頭数は、環境省によると、19年度はイノシシが64万100頭、ニホンジカは60万2900頭と、いずれも10年間で倍増した。近年はクマの市街地出没による人身被害が相次ぎ、希少植物など生態系への影響も懸念される。[br][br] 環境省は既に一部自治体や猟友会が手掛けている育成事業を参考に、制度の具体的な内容を詰める。担当者は「野生鳥獣の個体数管理は長年の課題。技の継承を進めることで担い手を増やし、過疎化が進む里地や里山の雇用創出にもつなげたい」と話した。 研修会で捕獲されたイノシシ=2月、新潟県上越市(新潟県猟友会提供)