【過疎地のワクチン接種】乏しい医療資源、医師の責任感頼りに

 診療所のスタッフと打ち合わせする医師の佐藤一賢さん=2日、山形県鮭川村
 診療所のスタッフと打ち合わせする医師の佐藤一賢さん=2日、山形県鮭川村
新型コロナウイルスのワクチン接種が医療資源の乏しい過疎地で大きな負担になっている。医師人数は限られており、通常医療もおろそかにできない。専門家は感染者の治療のみではなく「ワクチン接種も医師の責任感に頼らざるを得ない状況になっている」と指摘す.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 新型コロナウイルスのワクチン接種が医療資源の乏しい過疎地で大きな負担になっている。医師人数は限られており、通常医療もおろそかにできない。専門家は感染者の治療のみではなく「ワクチン接種も医師の責任感に頼らざるを得ない状況になっている」と指摘する。[br][br] 人口約4千人の山形県鮭川村。村でただ1人の医師佐藤一賢さん(49)は、住民のワクチン集団接種のため、1週間で唯一休日の日曜日を返上する考えだ。[br][br] 週5日の診療のほか、高齢者福祉施設も巡回する。村を含む最上地域8市町村で唯一の腎臓内科医としての顔も持ち、基幹病院の県立新庄病院(新庄市)で人工透析も週4日担当。通常の医療は止められない。 [br][br]「育ててもらったこの村に恩返ししたい」と6年前に実家の医院の3代目となった佐藤さん。「接種への協力は当然だ」と力強い。ただ、重いアレルギー反応のアナフィラキシー症状に備える必要があり「計画通りうまくいくのか神経を使う」と懸念も口にした。[br][br] 看護師や保健師計5人態勢で臨む予定だが、村は現職ではない看護師への応援依頼も検討する。[br][br] 佐藤さんが所属する新庄市最上郡医師会の土田秀也会長(62)は、遠方の訪問診療を課題に挙げる。外出が難しい患者は主治医が出向いて接種するが、往診に片道30分ほどかかる患者もいる上、経過観察のため30分間その場にとどまる必要があり、拘束時間が膨大となるためだ。「国の方針に過疎地の実態が反映されていないのではないか」と疑問を投げ掛けた。[br][br] 厚生労働省によると、2019年10月末時点で周辺に医療機関がない「無医地区」は590に及ぶ。医師のいる鮭川村より、さらに厳しい地域があるのが実態だ。[br][br] 過疎地支援の動きもある。隣の秋田県では、県医師会が医師や看護師、薬剤師で構成する「接種サポートチーム」を立ち上げる。要請に応じ、人員不足の集団接種会場への派遣を予定している。[br][br] 山形大の村上正泰むらかみまさやす教授(医療政策学)は「元々ぎりぎりな医療提供体制に負荷がかかるのは当然だ。他地域と連携できるような柔軟性のある体制を整備しなければならない」と強調した。 診療所のスタッフと打ち合わせする医師の佐藤一賢さん=2日、山形県鮭川村