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 新型コロナウイルスの全国的なリバウンド(再拡大)傾向が鮮明になる中、大阪府が「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請すると決め、消極的だった政府も重い腰を上げた。変異株の広がりといった不安要素も加わる中、第4波を抑える有効な対策につながるのか。「第2の大阪」は出ないのか。感染者が増加傾向にある首都圏の知事らは推移を注視する。[br][br] ▽ブレーキ[br][br] 「本日の陽性者数は599人。今後も右肩上がりに伸びる」。31日午後、大阪府の新型コロナ対策本部会議に出席した吉村洋文知事は重い口調で切り出した。[br][br] 「マスク会食」や「大人数での宴会自粛」を府民に再三訴えたが、春休みや歓送迎会シーズンを迎え、感染は加速度的に拡大。府の担当者は「2週間後には病床が逼迫(ひっぱく)する」と頭を抱える。府幹部らは「今までのブレーキが利かなくなっている。より強いブレーキが必要」と要請を決断した。[br][br] 関西地方の状況には、緊急事態宣言が3週間遅れの21日までで解除された首都圏の自治体も関心を寄せる。人出の増加に伴う感染者数は、来週以降に反映されるとみられるからだ。[br][br] 東京都の小池百合子知事は適用要請について「大阪で判断すること」と静観するが、ある都幹部は「大阪の急拡大を考えると、都内でどこまで膨れ上がるか恐ろしい」と懸念する。[br][br] 感染者が微増か横ばいで推移している千葉、埼玉、神奈川の3県は東京の状況が鍵を握る。千葉県の担当者は「感染者数が下がりきらず、東京で爆発的に増えると県内にも波及する」と警戒。ただ現段階では、連携して措置適用を要請する動きは見られない。[br][br] ▽想定外[br][br] 政府は現実味を増す第4波に危機感を強める。「(大阪府の)ここまで急速な悪化は想定外」(政府筋)で、まん延防止措置を適用すれば抑え込みに役立つと判断。措置適用を機に関西での感染拡大を止めたい考えだ。[br][br] ただ政府は当初、消極的だった。飲食店に対する営業時間短縮要請の徹底など「先にやるべきことがたくさんある」(官邸幹部)と考えていた。[br][br] 経済面での懸念もあった。2カ月半に及んだ宣言を3月21日までで全面解除してから10日しかたっていない。官邸幹部は「飲食店をはじめ『もう限界』との声は多い。中小企業の倒産が続かないか心配だ」と表情を曇らせた。[br][br] ▽医療危機[br][br] 感染力に関わる遺伝子の一部が変化した「変異株」の広がりも、リバウンドの大きさに影響するとの見方は強い。専門家は、国内で拡大する新型コロナウイルスが変異株に置き換わりつつあると指摘。厚生労働省が31日に公表したまとめでは34都道府県で変異株が確認され、大阪や兵庫は特に多い。変異株メインの流行では感染者が爆発的に増える恐れがある。[br][br] 特に英国株は感染すると重症化しやすくなる可能性がある。重症者用の病床は限られ、変異株が目立たなかった「第3波」ですら危機にひんした医療体制の増強は待ったなしだ。[br][br] 厚労省にコロナ対策を助言する専門家組織のメンバー、太田圭洋・日本医療法人協会副会長は「変異株はかなり広がっている可能性がある。これまでと同じ対策で拡大を食い止められるのか分からない」と危機感を強める。 大阪・梅田を歩くマスク姿の人たち。新型コロナウイルスの新規感染者急増を受け、大阪府は国に「まん延防止等重点措置」の適用を要請した=31日午後4時50分