【柏崎刈羽原発運転禁止命令】東電 経営再建「切り札」絶望的

 東京電力柏崎刈羽原発=2016年4月
 東京電力柏崎刈羽原発=2016年4月
東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の核物質防護不備を巡り、原子力規制委員会が事実上の運転禁止命令を出す方針を決めた。テロ目的などの不正侵入を検知できない状態が長期にわたった異常事態の実態解明に向け、規制委は1年以上かけて検査を行う見通し。経営再.....
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 東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の核物質防護不備を巡り、原子力規制委員会が事実上の運転禁止命令を出す方針を決めた。テロ目的などの不正侵入を検知できない状態が長期にわたった異常事態の実態解明に向け、規制委は1年以上かけて検査を行う見通し。経営再建の切り札とされる同原発の早期再稼働は絶望的となり、国や東電が描く福島第1原発の廃炉や賠償の枠組みが破綻しかねない事態に発展した。[br][br] ▽放置か無知か[br] 「意図的にやらなかったのか、知識が足りなかったのか、なめているのか。今つかみたいのはそこだ」。規制委の更田豊志委員長は、問題を4段階で最悪レベルの「赤」と暫定評価した16日の臨時記者会見で、東電への不信感をあらわにした。[br][br] 規制委と東電によると、1月に協力企業の作業員が侵入検知設備を誤って壊したのを機に規制委が現地検査し、昨年3月以降、計15カ所の設備故障があったことが判明。詳細は公表していないが、うち10カ所は代替措置が「誰が見ても非常にお粗末」(更田氏)だった。同様の故障は2018年1月~昨年3月にも起きていたという。[br][br] ▽リセット[br] 「南海トラフ巨大地震が起きれば、東京湾に集中した火力発電所が全滅する恐れがある。柏崎刈羽にスタンバイしてもらわないと」。昨年11月27日、新潟県を訪れた経済産業省資源エネルギー庁の保坂伸長官は、自民党県連幹部に強調した。[br][br] 関係者によると、保坂氏はこの日、新潟市内で幹部らと深夜まで杯を交わした。地元の民意に配慮して柏崎刈羽の再稼働を6、7号機に限るよう求めた幹部に、保坂氏が「(他号機が立地する)柏崎市が納得しない」と、さらなる推進姿勢を示す場面もあったという。[br][br] 今年3~4月に7号機原子炉に核燃料を装塡(そうてん)し、6月に県議会の同意を得て早期に再稼働―。地元ではこんなシナリオもささやかれていたが完全に吹き飛んだ。柏崎市の桜井雅浩市長は今月16日の記者会見で「今までの積み重ねがリセットされてしまった」と述べた。[br][br] ▽おごり[br] 国や東電が再稼働を急ぐのは、福島第1原発事故の廃炉や賠償の費用を稼ぎ出すという最重要課題があるからだ。[br] 政府は事故対応の費用を、廃炉に8兆円、賠償に8兆円など総額約22兆円と試算。うち約16兆円が東電の負担で、東電は経営計画で年間5千億円を確保するとの目標を掲げる。柏崎刈羽原発の再稼働により1基当たり年間900億円の収支改善効果を見込んでおり、目標達成の大前提となっている。[br][br] しかし同原発では、1月下旬に所員が同僚のIDカードで中央制御室に不正入室していたことが発覚したほか、完了したとしていた7号機の安全対策工事の一部が未完了だったことも次々と判明。このままでは、再稼働によって事故処理費用を稼ぎ出すという枠組み自体が揺らぎかねず、原発立地地域選出の自民党国会議員は「東電は自らに課された責任を理解していない」と憤る。[br][br] 別の同党議員は「警備なんて警備会社や警察の仕事だという東電のおごりが原因だ。組織風土を根本から変えなければ同じことが起こる」と指摘。ある東電関係者は「『福島への責任』を掲げて再稼働へ突き進んできたが、この会社に原子力を扱う資格があるのかという宿題は残ったままだった」と肩を落とした。 東京電力柏崎刈羽原発=2016年4月