【弾道ミサイル発射】北が主導権確保へ先手 警告か再開への布石か

 24日、米ワシントンで演説するバイデン大統領(ゲッティ=共同)
 24日、米ワシントンで演説するバイデン大統領(ゲッティ=共同)
北朝鮮が約1年ぶりに弾道ミサイルを発射した。初の米朝首脳会談に踏み切ったトランプ前政権からの対応変更に悩むバイデン政権を尻目に、金正恩朝鮮労働党総書記は主導権確保へ先手を打った。短距離の警告弾にとどまるのか。米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(.....
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 北朝鮮が約1年ぶりに弾道ミサイルを発射した。初の米朝首脳会談に踏み切ったトランプ前政権からの対応変更に悩むバイデン政権を尻目に、金正恩朝鮮労働党総書記は主導権確保へ先手を打った。短距離の警告弾にとどまるのか。米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射再開への布石か。中国に接近するそぶりも見せ、関係国の駆け引きが本格化する。[br][br] ▽予兆なし[br][br] 「明確な予兆はなかった。北朝鮮も進化している」。日本政府関係者によると、日米韓は25日朝の弾道ミサイル発射の動きを事前に察知できなかったようだ。過去の発射では、前の晩には兆候を捕捉できることも多かった。北朝鮮は今回、偵察衛星や電波傍受による監視を逃れるため発射台付き車両(TEL)を機動的に運用したとみられ、実戦能力の向上を誇示した。[br][br] 発射したのはこの数年で開発を急進展させた固体燃料の新型短距離弾道ミサイルの可能性がある。「KN23」など変則的な軌道を描き、既存のミサイル防衛(MD)では対応が困難なものもあり、韓国だけでなく日本にとっても脅威だ。[br][br] トランプ前米大統領は短距離ミサイルを問題視せず、日米韓の足並みの乱れを招いた。今回、北朝鮮は日本の排他的経済水域(EEZ)への発射は避けたが、今後はEEZを狙う可能性もある。[br][br] ▽危機の3月[br][br] 「われわれは忍耐心を発揮したが、南朝鮮(韓国)当局は戦争の3月、危機の3月を選択した」。金正恩氏の妹、金与正氏は15日付の談話で米韓両軍の合同指揮所演習を巡り韓国の文在寅政権を強く非難。バイデン政権にも発足直後から面倒を起こさない方が良いと「忠告」した。今回の発射に日米韓の連携再構築をけん制する狙いがあるのは明らかだ。[br][br] 北朝鮮は一方で中国に秋波を送る。「敵対勢力の全方位的な挑戦と妨害策動に対処し、朝中両国が団結と協力を強化する」。朝鮮中央通信によると、着任したばかりの北朝鮮の李竜男駐中国大使は22日、中国共産党高官と面会し、金正恩氏のメッセージを伝えた。[br][br] 「国防力強化や北南関係、朝米関係に関する政策的立場」を1月の党大会で決定したことも通告。「国防力強化」への言及まで公開するのは異例だ。バイデン政権との対決を前に「後ろ盾である中国に仁義を切った」(北京の外交筋)との見方もある。[br][br] ▽翻弄[br][br] 「申し訳ない。質問はあと1問だけにしてほしい」。北朝鮮のミサイル発射時、オンライン会合に参加していた米国家安全保障会議(NSC)でアジア政策を仕切るキャンベル・インド太平洋調整官は中座。翻弄(ほんろう)される米国の姿が浮き彫りとなった。[br][br] 金正恩氏は1月の党大会で固体燃料ICBMや多弾頭技術、原子力潜水艦、戦術核など全方位で核戦力を増強する方針を表明。米本土防衛に当たる北方軍のバンハーク司令官は今月16日の議会証言で「近い将来、改良型ICBMの発射実験を始めるかもしれない」と警戒感を示した。[br][br] バイデン政権は北朝鮮の度重なる挑発に、打つ手がない状況に追い込まれている。表向きは日韓両国などと連携し、新たな北朝鮮政策に向けて「作業を進めている」(米高官)とするが、米当局者の一人は「対北朝鮮で良い選択肢はない」との苦境を吐露した。(北京、ワシントン共同) 24日、米ワシントンで演説するバイデン大統領(ゲッティ=共同)