新型コロナウイルス感染拡大による出発直前の延期決定から1年。東京五輪の聖火リレーが25日に始まる。緊急事態宣言は全面解除されたものの、変異株の広がりや「第4波」への懸念もくすぶる。出発地の福島県で開催される3日間は、今後聖火を迎える都道府県の試金石に。関係者は不安を抱えながらスタートラインに立つ。[br][br] ▽緊張感[br] リレーの出発地、サッカー施設「Jヴィレッジ」が立地する福島県楢葉町。24日、沿道には2メートルおきに立ってもらうよう、チョークでバツ印が記された。[br][br] 「晴れ晴れとした表情で迎えるという状況にはない。どうやって安全、安心に終えることができるか、引き締まった思いの方が大きい」。福島県の内堀雅雄知事は22日、記者会見で緊張感を漂わせた。[br][br] 再出発までの道のりは平たんではなかった。大会組織委員会は昨年9月、121日間の日程やルートの短縮はせず、従来の計画を維持すると発表。だが第3波で感染者数は全国的に急増。年明け早々には11都府県に緊急事態宣言が再発令され、関係者に激震が走った。[br][br] 昨年中に示されるはずだった具体的な感染予防策も先延ばしに。沿道での応援は居住地近く以外では自粛するよう求めるなどの方針を示したのは、スタートまで1カ月に迫った2月25日だった。[br][br] ようやく迎えるスタート。福島県の担当者は「どのぐらいの人が沿道に来るか読めない」と懸念する。県内は3日間かけ26市町村、約51・7キロを走る。1カ所に人が集中する可能性は低いと見ているが、通常の雑踏担当に加え、感染症対策の人員も配置して対応する。[br][br] ▽懐疑的[br] だがリレーや五輪を取り巻く環境は依然として厳しい。島根県の丸山達也知事は2月、政府や東京都の感染対策が不十分だとして県内のリレーを中止する意向を表明。3月には、鳥取県がパレードなどを縮小し、浮いた予算をコロナで苦境に陥っている飲食店支援に回す方針も示した。[br][br] 感染者数は微増傾向にあり、福島県に隣接する宮城県や仙台市、山形県と山形市は独自の緊急事態宣言を出した。[br][br] 共同通信社が20、21日に実施した全国電話世論調査では、今夏に大会を開催するべきだとの回答は23・2%にとどまる。[br][br] 28、29日にリレーを実施する栃木県の担当者は「大会開催に懐疑的な見方が広がる中、理解促進のためだと言い聞かせながら準備している」と強調した。