【風力発電の規制緩和】国主導、自治体は慎重

 北海道松前町の風力発電=2019年8月
 北海道松前町の風力発電=2019年8月
国が主導する風力発電の規制緩和に疑問の声が出ている。新設時の環境影響評価(アセスメント)を義務付ける対象を現行の「出力1万キロワット以上」から「5万キロワット以上」に絞り込む内容だが、多くの自治体は国基準より小規模な発電施設もアセス対象とし.....
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 国が主導する風力発電の規制緩和に疑問の声が出ている。新設時の環境影響評価(アセスメント)を義務付ける対象を現行の「出力1万キロワット以上」から「5万キロワット以上」に絞り込む内容だが、多くの自治体は国基準より小規模な発電施設もアセス対象としており、緩和へ向けた条例改正には慎重なためだ。生態系への影響や騒音などへの懸念も根強く、国の思惑通りに緩和が進むかどうかは不透明だ。[br][br] ▽結論ありき[br] 「無理くりな印象を受ける」。環境、経済産業両省が11日の有識者検討会で、アセス対象を「5万キロワット以上」に絞り込む案を示すと、委員は首をひねった。担当者は、埋め立て事業は50ヘクタールを超えるとアセス対象になると例示し、開発面積がほぼ同じになる出力規模を算出したと説明した。[br][br] 説明の分かりにくさは規制緩和の「結論ありき」なのが原因だ。河野太郎規制改革担当相が主宰する特別チームが昨年、再生可能エネルギー普及に向けた緩和を要求。事業者団体の求める「5万キロワット以上」を念頭に「スピード感を持って見直さなければ、所管官庁を代えざるを得ない」などと環境省幹部に迫った。[br][br] 検討会では、委員から「環境省の立場も考えると…」との声も漏れ、表立った反対意見は出なかった。両省は次回会合で了承を得て政令改正に踏み切る方針だ。[br][br] ▽消極的[br] 環境省によると、33道府県と15政令指定都市が風力発電を対象とするアセス条例を制定。「7500キロワット以上」や「5千キロワット以上」と国の現行要件より厳しい例が多い。[br][br] 両省は、国の基準変更を受けて、要件緩和に向けた条例改正が進むと期待する。だが検討会に出席した北九州市の担当者は「根拠が不十分のため住民へ説明しづらい。改正に消極的にならざるを得ない」と話した。[br][br] 日本は狭い国土に多様な動植物が分布しており、希少鳥類をはじめ生態系への影響が生じやすい。騒音や景観悪化への懸念から反対運動は増加傾向で、禁止区域を設けた自治体もある。[br][br] 検討会で委員の勢一智子西南学院大教授(行政法)は「自治体がトラブル回避のため規制強化する可能性もある。国が規制緩和しても整備の迅速化に必ずしもつながらない」と指摘した。[br][br] 環境省の担当者は「規制緩和だけでは地域の理解が得られないのは分かる」と認め、5万キロワット未満には手続きを簡略化したアセスを導入することも検討する考えを示した。 北海道松前町の風力発電=2019年8月