制度の欠陥浮き彫りに 再給付議論も 持続化給付金

 持続化給付金の要件を満たしていない受給者に返金を呼び掛ける案内(経産省提供)
 持続化給付金の要件を満たしていない受給者に返金を呼び掛ける案内(経産省提供)
新型コロナウイルス感染拡大に対する目玉政策として昨年始まった持続化給付金。競馬界に続き、今回判明した211人のボートレーサー(競艇選手)による不適切な受給は、改めて制度の欠陥を浮き彫りにした。大規模な不正や逮捕者が相次いでいるが、与野党から.....
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 新型コロナウイルス感染拡大に対する目玉政策として昨年始まった持続化給付金。競馬界に続き、今回判明した211人のボートレーサー(競艇選手)による不適切な受給は、改めて制度の欠陥を浮き彫りにした。大規模な不正や逮捕者が相次いでいるが、与野党からは再給付を求める声が上がる。背景にあるのは刻々と忍び寄るコロナ流行「第4波」への懸念だ。[br][br] ▽平謝り[br][br] 「大変重大な問題と受け止めている。選手に対する指導不足だった」。日本モーターボート競走会の潮田政明会長は30日、東京都内で開かれた記者会見で、沈痛な面持ちでこう述べた。受給した選手はレースの打ち切りなどを理由に申請していたが、実際は別のレースに参加させてもらっていた。会長は新型コロナの業界への影響は極めて限定的で申請はモラルに反すると断言し、平謝り。競走会と選手会は給付金を受け取った全選手に返還を指示したという。[br][br] 公営競技での受給を巡っては、日本中央競馬会(JRA)の問題が先に発覚した。JRAは今月6日、騎手13人を含む競馬関係者約160人が不適切な受給をし、その総額は約1億8700万円に上ると発表した。[br][br] 全国で逮捕者も相次いでいる。警察庁によると、持続化給付金の不正受給を巡り、39都道府県警が昨年12月18日までに詐欺容疑などで計279人を摘発した。逮捕が203人、書類送検が76人で、立件総額は約2億1200万円。国には返還の申し出が相次ぎ、今月25日までに約116億円が返還された。[br][br] ▽「ざる」[br][br] 給付金はコロナで落ち込んだ経済を支える政策の柱の一つだった。経済産業省によると、29日までに約424万件、約5・5兆円を給付。迅速な支給を目指し、手続きを簡略化したことがチェックの甘さを招き、不正の温床となったとされる。 申請受け付けは既に終了したが、与野党からは再給付を求める声が上がっている。自民党の岸田文雄前政調会長は10日、再給付を盛り込んだ追加経済対策に関する提言を菅義偉首相に渡した。立憲民主、共産、社民の3党も19日、再給付の法案を衆院に共同提出。ただ、「ざる」と言われるほど緩い審査を是正する具体策はいずれにもない。[br][br] ▽検証[br][br] 厳格な制度設計の議論が置き去りにされたまま「給付ありき」の追加経済対策が叫ばれる背景には、感染の終息が見えないコロナの現状がある。[br][br] 共同通信の27日までの集計によると、全国28都府県で直近1週間の新規感染者がその前の週よりも増加。大阪府の吉村洋文知事は29日「第4波に入った」との認識を示し、国に「まん延防止等重点措置」の適用を要請する考えを表明した。措置が適用されたり、仮に緊急事態宣言が再び発令されたりすることとなれば景気の悪化は避けられず、さらなる経済対策が急務となる。[br][br] 岡部卓明治大専任教授(社会保障論)は「制度の検証が不十分なままの再給付は、また不正を引き起こしかねない。モラルハザード(倫理観の欠如)を排除するためにも、専門家によるチェックなど再発防止策を盛り込むべきだ」と指摘した。 持続化給付金の要件を満たしていない受給者に返金を呼び掛ける案内(経産省提供)