わいせつシッター氏名公開 「被害防止」か「さらし者」か

 わいせつシッター氏名公開のイメージ
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わいせつ事件を起こしたベビーシッターを巡る厚生労働省の新たな対策に波紋が広がっている。刑を終えたシッターの氏名をインターネットで公開し、誰でも閲覧できるようにするものだ。再犯被害防止として異例の対応に踏み切ったが、加害者の更生を妨げるとの指.....
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 わいせつ事件を起こしたベビーシッターを巡る厚生労働省の新たな対策に波紋が広がっている。刑を終えたシッターの氏名をインターネットで公開し、誰でも閲覧できるようにするものだ。再犯被害防止として異例の対応に踏み切ったが、加害者の更生を妨げるとの指摘も。実際に被害に遭った子の親も「実名をさらすことが抑止力になるのか」と疑問を呈す。[br][br] ▽虐待も[br][br] 個人で働くシッターは自治体に届け出る必要があり、情報は内閣府サイト「ここdeサーチ」に掲載される。厚労省は2021年度以降この仕組みを活用する。預かった子どもに対してわいせつ事件や虐待事件を起こしたシッターは、刑を終えた後、原則2年間の事業停止命令を受ける。内閣府サイトの個人ページに、事件内容は伏せた上で事業停止命令を受けた日時を記載。シッター本人が廃業届を出さない限り、掲載され続ける。[br][br] ▽前進[br][br] 「安心して利用、選択するためには、一定の情報が開示されている方がよいとの声が非常に大きい」。田村憲久厚労相は2月の記者会見で、意義を強調した。昨年4月以降、シッター仲介サイトを運営する「キッズライン」(東京)に登録していた男2人が強制わいせつ容疑などで逮捕されたことを念頭に置いた発言だ。[br][br] 東京都渋谷区のシッター参納初夏さん(44)は「一歩前進だ。意欲がある良いシッターを選んでもらえるようになる」と歓迎する。キッズラインの事件以降、保育や教育現場の性犯罪を根絶するための署名活動をし、2万筆以上を集めた。「事件を起こしたシッターは子どもと関わる仕事から締め出すべきだ」[br][br] ▽人権侵害[br][br] 「実名をさらして一斉に悪口を書き込む『ネットの正義』のような発想であり、人権侵害ではないか」。キッズラインに登録していた男に長女=当時(5)=が被害に遭った母親は首をかしげる。加害者が保育や教育の仕事に就けないよう、性犯罪歴がないことを示す「無犯罪証明書」制度の導入を求めてきたが、厚労省方針には疑問を感じる。母親は「子どもが被害に気付くことができたり、鬱屈(うっくつ)した気持ちで犯罪者になったりしないよう、幼少期からの性教育により力を入れるべきだ」と訴える。[br][br] 加害者の社会復帰の弊害になるとの指摘も。甲南大法科大学院の園田寿そのだひさし教授(刑法)は「刑法上では前科は一定期間で消えるが、今回の仕組みは一生、社会から排除することになる」と批判。「犯罪者のレッテルが貼られ、保育分野以外の職業にも就けなくなってしまう」と懸念する。[br][br] 実名公表をためらう自治体も出そうだ。ここdeサーチにどのような情報を載せるかは自治体の判断。現状でも、シッター名を匿名にしたり通称のみを掲載したりしている自治体もあり、国の方針に従うかは不明だ。[br][br] 個人のシッター情報を1件も掲載していない石川県の担当者は「個人名をネットに載せることには抵抗感がある」。処分歴公表にも「国の後ろ盾があるなら検討するが、慎重に考える必要がある」と話す。 わいせつシッター氏名公開のイメージ