時評
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 プラスチック製レジ袋が1日から原則有料化された。日本は1人当たりのプラごみ廃棄量が米国に次いで多い。それなのに諸外国と比べて削減対策が大きく遅れていた。有料化は多くの人がこの問題をより深く考える契機になるだろう。だが、レジ袋は日本で発生するプラごみ量のわずか数%。海洋汚染は深刻で、その対策は世界の重要課題だ。今回の措置を第一歩とし、プラごみ量そのものを減らす動きを加速させたい。[br] 日本政府の出遅れは明らかだった。一昨年、カナダで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本は削減のための数値目標を盛り込んだ「海洋プラスチック憲章」の署名を米国と共に拒否した。批判が高まり、昨年の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)議長国だった日本は慌てて対応を急ぎ、会議開催を機に有料化を決めた。多くの国がいち早く禁止していた中で対策の遅れが際立った。[br] 日本では年間約900万トンのプラごみが出る。レジ袋以外の、年間20億本が回収されずにいるペットボトルや、身近な包装容器などの使用や廃棄される量を減らす対策はほとんど手付かずだ。プラごみの多くは焼却される。リサイクル率は約25%だが、その約70%はベトナムなどに輸出され、輸入国でのリサイクルだ。輸入国も規制をし始めているが、海への流出は止まらない。[br] プラごみの海への年間流出量は推定800万トン以上。2050年には海中の総量は魚の総量を超えるとの予測もある。生態系を破壊するだけでなく、魚介類の食物連鎖を通じて人体にも悪影響を与えると指摘されている。観光や漁業に与える損害は年間130億ドル(約1兆4千億円)に及ぶという。[br] プラ製品の生産、消費抑制はそう簡単ではない。だが、回収・リサイクル率の向上やごみ輸出を減らすことは政策誘導で可能だ。ごみ輸入国からの海洋流出を減らすためのさまざまな支援策を検討する必要がある。[br] 政府は30年までに使い捨てプラ製品の排出量を25%減らす方針だ。ごみの管理や回収、代替品開発支援だけでなく、削減目標を達成できる具体的政策を求めたい。[br] プラスチックは生活の隅々に浸透している。現在のペースだと今後30年間に世界で260億トンも生産されるという。今、新型コロナウイルスと向き合う新しい生活様式が問われている。「脱プラ」も容易ではないが、消費者もプラ依存の生活を振り返り、見直す努力をしたい。