下北地域初の高等教育機関となる青森明の星短期大下北キャンパスが今月、むつ市に開学した。地域の「学びの拠点」として根を下ろし、歴史を築いてほしい。[br] 介護福祉、キャリアビジネス、保育の3コースがあり、ICT(情報通信技術)による遠隔授業システムで、青森市の本学の講義を受講できる。各種資格取得に加えて英語教育にも力を入れ、米国ハワイ州の提携大学に留学が可能なのも特色だ。[br] 下北地域は大学や専門学校などの高等教育機関がなく、高校生が進学する際は地域を離れざるをえなかった。自宅から通える高等教育機関がある他地域と比べ、教育費の面で格差となっていた。キャンパスは進学を諦めていた高校生の選択肢を広げる希望の光になる。[br] 1期生となる入学者は18人。いずれも下北地域在住で、5人程度と見ていた関係者の予測を大きく上回ったことは、潜在的なニーズの表れではないか。勉強や資格取得に励み、夢をかなえてほしい。[br] 下北地域への高等教育機関誘致を巡っては、これまでも動きがあった。むつ市では1990年代後半、原子力分野の人材育成を柱とした4年制私立大の設立構想が浮上し、民間有志による設置準備委員会も発足したが、実現に至らなかった。[br] キャンパス開学に当たっては同市の学校法人星美学園が建物を用意したり、市が運営費を補助したりして協力。明の星短大側もこうした熱意に応え、進出を決めたという。市にとっては大学誘致が取り上げられた1977年の市議会一般質問から数えて、43年越しの悲願達成となった。[br] 全国の私立大では少子化による定員割れが相次ぐ。明の星短大も順調な経営が続けられるかは不透明だ。経営不振ですぐにキャンパス撤退ということがあってはならない。[br] そのためには短大側も実績を上げ、魅力を創出し続ける努力が求められよう。市内の県立4高校との連携協定に基づく交流事業などを通じた生徒へのアピールや、社会人や主婦向けの講座を開催するなどし、地域に必要不可欠な存在として確固たる地位を確立したい。[br] 下北地域の企業が中心となり、地域への人材定着と還流を目的にした後援会を設立し、キャンパスを支える動きもある。後援企業による卒業生雇用や、従業員の学び直しにキャンパスを活用する方針だ。人材の好循環が生まれ、地域活性化につながる取り組みとして期待したい。