新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済活動の停滞を受け、青森、岩手両県の市町村も事業者に対する独自の支援策を次々と打ち出している。[br] 現状ではサービス業への現金給付などが中心。産業の裾野(すその)は広く、さらに複数の業種が密接に結び付くケースもある。財政出動の大小ではなく、地域の実情に即した“特効薬”となるよう、十分に目配せすることが必要だ。[br] 青森県南と岩手県北の各市町村の支援策をみると、特に経済的ダメージが大きい飲食、宿泊業者への現金給付、地元で使えるプレミアム付き商品券の発行などが目立つ。外出自粛の影響が顕著で、国の支援に上乗せを講じている。[br] 十分な額ではないかもしれないが、行政の積極姿勢は事業者にとって心強いだろう。一方で、市町村ごとに街並みや産業構造は異なり、サービス業より1次、2次産業の従事者が多い地域もある。[br] 外食産業の仕入れの減少や消費マインドの冷え込みによって、悪影響は農業をはじめとした全業種に及び、直接、間接的に打撃を受けている。いま行政に求められるのは、地域の実情を把握し、優先的に手当が必要な分野を見極め、ニーズに即応する力ではないだろうか。[br] 地域ならではの支援策を打ち出す自治体も出てきた。田子牛が地元ブランドの田子町は畜産業に着目。枝肉の価格が下落していることから、肥育農家に10万円を給付する支援を開始した。漁業が盛んなおいらせ町では、収入が減った漁船の所有者に20万円を給付する支援策も掲げる。国を補完する意味でも、実効性が期待できる施策と言えよう。[br] その日を乗り切るのも必死な事業者にとって、自治体の支援はまさに命綱。だが、事業の存続だけを目的にはしたくない。経営の立て直しを図り、さらには成長を望めるよう、後押しを継続しなければならない。新型コロナに伴う経済対策だが、突き詰めれば従来の中小企業対策の延長線上にある。[br] 交付税への依存度が高い地方自治体の台所事情は厳しい。待ったなしの緊急対応を求められているため、貯金に当たる財政調整基金などを取り崩し、何とか費用を捻出しているのが現状だ。[br] 果断な財政支出は必要だが、住民サービスの低下を招くようでは意味がない。国からの交付税措置を期待する向きもあるが、財政を圧迫しないよう十分に配慮してほしい。