【新型コロナ】焼き鳥の移動販売店「兼田」(八戸)仮設店舗設置/兼田さん「とにかく前へ進まなければ」

焼き鳥の移動販売を行う兼田智仁さん。新型コロナウイルスの影響で出店ができなくなり、自宅敷地を活用した臨時店舗に希望を託す=19日、八戸市
焼き鳥の移動販売を行う兼田智仁さん。新型コロナウイルスの影響で出店ができなくなり、自宅敷地を活用した臨時店舗に希望を託す=19日、八戸市
新型コロナウイルスの感染拡大は多くの人の生活を一変させる。移動販売を行う八戸市の焼き鳥専門店「兼田」代表の兼田智仁さん(40)も翻弄(ほんろう)される一人。店は焼き鳥に加え、特製のたい焼きやタピオカドリンクが人気で繁盛したが、相次ぐイベント.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大は多くの人の生活を一変させる。移動販売を行う八戸市の焼き鳥専門店「兼田」代表の兼田智仁さん(40)も翻弄(ほんろう)される一人。店は焼き鳥に加え、特製のたい焼きやタピオカドリンクが人気で繁盛したが、相次ぐイベント中止で出店機会を失い、収入は激減。円形脱毛症になるなど精神的にも追い詰められた。「とにかく前へ進まなければ」。暗闇を照らしたのは新たな目標だった。現在は同市根城6丁目の自宅敷地で臨時営業を始めるため、準備に没頭。2畳ほどの小さな仮設店舗に希望を託す。[br] 実家は三戸町で長年愛される焼き鳥店を営む。高校卒業後に家業を手伝い始め、市中心部のみろく横丁にも出店。接客の楽しさや料理を味わう人たちの笑顔に触れ、喜びを感じた。[br] その後、階上町のスーパー敷地を間借りし、持ち帰り専門の販売を開始。自慢の焼き鳥は評判で、徐々に移動販売も手掛けるようになった。6年ほど前に完全移行した移動販売では、ラムネ味など珍しいたい焼きや、70種類以上のタピオカドリンクをメニューにそろえ、若者らに飛ぶように売れた。今年はイベント出店を増やそうと考えていたところに飛び込んできたのが、新型コロナウイルス感染拡大のニュースだった。[br] 毎日のように目にするイベントの中止情報。その度に怒りや不安で頭がいっぱいになり「死んだ方がましなのか」と思い詰めた。夜は悪夢にうなされた。スタッフが来なくて営業できなかったり、台風で出店できなかったりと、これまで見たことがない夢を見るようになった。気が付けば髪も抜け落ち、「明るさが取りえだった自分はどこかに行ってしまった」[br] 不安を振り払うきっかけは、一歩を踏み出すことだった。後先を考えず、ゴールデンウイーク期間中に自宅前で焼き鳥の販売を始めた。短文投稿サイト「ツイッター」でその様子を発信すると、かつての常連客が次々と訪れた。思ってもみなかった。励ましの言葉や差し入れをもらううちに、力が湧いた。[br] 連休後、階上でかつて使っていた店舗を自宅敷地に運び込み、修復作業に明け暮れた。二度と使うことはないと思っていた懐かしの店舗が、再出発の日のために、自分を待っていてくれたような気がして感謝の思いがこみ上げた。[br] ペンキを塗りながら「メニューはどうしよう」「新たな商品を手掛けようかな」と経営のアイデアが次々と浮かんだ。[br] 「ピンチはチャンスというがまさにその通り。今まで以上のものを提供し、お客さんを喜ばせたい」。今は再開の日が待ち遠しくて仕方ない。[br] 最近、また夢を見た。そこには焼き鳥を仕込む笑顔の自分がいた。焼き鳥の移動販売を行う兼田智仁さん。新型コロナウイルスの影響で出店ができなくなり、自宅敷地を活用した臨時店舗に希望を託す=19日、八戸市