新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が全面解除されて20日経過した。休業要請の緩和で社会活動が回復し、懸念された再流行が北九州や東京で起きた。しかし、拡大は止まりつつあり、夜の繁華街や介護施設、医療機関の集団感染を抑えれば、残り火再燃の危機は乗り切れそうだ。警戒を呼び掛ける「東京アラート」も解除された。[br] 世界では感染者が増え続けている。国境を越える渡航が制限されているが、国際航路は徐々に再開されるだろう。日本より感染が多い国との交流は再流行につながりかねない。検疫だけで防げず、国際便再開に際し慎重な危機管理を求めたい。[br] 新型コロナ対策の課題の一つは感染の全体像があいまいなことだ。発症2日前から発症直後が最もうつりやすいため、感染症対策の基本の早期発見、早期隔離が通用しない。しかも無症状で済む感染者が発症者より多く、実態の調査が難しい。[br] 感染を判定するPCRや抗原、感染歴を探る血清抗体の検査も確実でないが、各種データから実態を捉え、早期診断の障害を克服して再流行を一刻も早く察知すべきだ。各国に比べて格段に少なかったPCR検査態勢は少し進み、無症状も掘り起こせるようになった。[br] 抗体検査から推定すると感染者は国内で集計された約1万7300人の20倍以上になる。すると致死率は0・3%程度でインフルエンザの0・1%に近づく。ワクチンはまだないが、重症者を収容する集中治療室(ICU)を増やし、治療を工夫すればもっと救命できる。[br] 梅雨明け後には、猛暑がやってくる。厚生労働省の人口動態調査によると熱中症死者は高齢者を中心に年間千人前後に達する。これも重大な健康被害で、マスク着用は人と接する場合などに限りたい。[br] 2009年新型インフルエンザ対策に関して10年に出された総括会議報告書にはPCR検査強化や議事録作成などが提言されていた。この重要な報告は今回あきれるほど無視された。厚労省の怠慢といえる。今からでも専門家会議や対策の検証、改善は欠かせない。[br] 最も心配なのは秋から冬への再流行である。症状が区別しにくいインフルエンザの流行期と重なるので、対処はその分混乱する。3、4月を上回る大流行になれば、これまでのように開業医が「蚊帳の外」のままでは対応できない。医療崩壊を起こさないよう、開業医の役割も含めて今のうちに整備しておくべきだ。