時評(4月2日)

来春から中学校で使用する教科書の検定結果が公表された。「主体的・対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領が反映された新しい教科書である。「足を使って調査する」「グループで検討する」学習が書かれているのが特徴だ。一方的に講義する従来型の授業か.....
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 来春から中学校で使用する教科書の検定結果が公表された。「主体的・対話的で深い学び」を掲げる新学習指導要領が反映された新しい教科書である。「足を使って調査する」「グループで検討する」学習が書かれているのが特徴だ。一方的に講義する従来型の授業からの転換を目指す姿勢が見られ、定着させたい。 新教科書の各教科でさまざまな災害が取り上げられている。ある地理の教科書は、2011年の東日本大震災で沿岸部をのみ込む津波、18年の西日本豪雨で山肌をえぐり人里に押し寄せた土石流などの写真をふんだんに掲載した。別の教科書は、崖崩れなどの危険箇所や避難所を歩いて把握し、地域の白地図に自作のハザードマップを描く活動を載せている。[br] 理科では新学習指導要領に基づき、全学年で自然災害を学ぶことになった。ある教科書は「地域の地形が災害を発生させる可能性があるのか」とテーマを設定。博物館や図書館で資料を調べた後、実際に歩いて地形を調べたり、住民に話を聞いたりする課題を提示している。[br] 災害を「自分事」として学習する背景には、東日本大震災の経験があるからだろう。宮城県石巻市の大川小学校では、児童が教員らの指示で校庭に40分以上とどまったため、避難が遅れ、児童74人が犠牲になった。[br] 避難場所や経路を定めた防災対策を事前に整備しておく学校の責任は、裁判でも認定されており、防災教育は必修である。地理、理科など各教科でばらばらに扱うより「災害科」として統一し、系統的に学習するのも一考である。[br] 「深い学び」の問題点は、子どもと先生の負担だ。3年間で学ぶ各教科の平均ページ数の総量は、現行の教科書より7・6%増の1万1280ページ(A5判換算)になるという。[br] しかし、授業時間数は変わらないため、時間当たりで学ぶページ数が増える。生徒が校外で調べる授業では、準備に時間がかかる。それでなくても忙しいといわれる先生である。長時間労働を解消する働き方改革に対する懸念も出てくる。[br] 今や「1+1=2」という答えが一つしかない問題の時代ではなくなっている。これからの人たちは、解決法が分からない課題に立ち向かわなければならない世代だ。自分で調べて考え、試行錯誤しながら答えを出すことが求められる。[br] その基礎体力をつけるのが学校の学習である。問題点を克服する勇気と知恵が必要だ。