時評(6月23日)

前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が公選法違反(買収)の疑いで逮捕された。法秩序の維持をつかさどる法務省のトップだった国会議員の前代未聞の事件である。昨年7月の参院選を巡り、広島の地元県議ら94人に総額約2570万円を配った容疑だ。.....
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 前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員が公選法違反(買収)の疑いで逮捕された。法秩序の維持をつかさどる法務省のトップだった国会議員の前代未聞の事件である。昨年7月の参院選を巡り、広島の地元県議ら94人に総額約2570万円を配った容疑だ。なぜそこまでして当選を目指したのか。[br] 単なる公選法違反事件ではない。「安倍1強」長期政権の弊害が積もって吹き出たウミである。その背景事実を含め徹底的に解明すべきだ。[br] 改選2議席の参院広島選挙区は、自民党現職の溝手顕正氏と無所属現職の森本真治氏の安定区だった。そこに自民党本部が県連の「2人は無理」との反対を押し切って、案里氏を擁立させた経緯があった。[br] かつて安倍晋三首相を「過去の人」と公然と指摘した溝手氏。地元では案里氏は溝手氏への「刺客」と受け取られていたといわれる。[br] 克行氏は首相秘書官を務めるなど安倍首相に近い。案里氏の参院選では安倍事務所の秘書が選挙区入りし、菅義偉官房長官も応援演説に駆けつけた。さらに党本部は1億5千万円の資金を案里氏側に支給。溝手氏側に交付された1500万円の10倍という破格の扱いだった。[br] 克行氏の関係者は取材に「選挙が強いわけでないのに大金を託された以上、なりふり構わず勝つしかなくなった。だから、ああいうこと(現金配布)をするしかなかった。ある意味では首相の被害者だ」と話した。[br] このような背景を見ると、国会周辺で指摘されている「首相の私怨(しえん)」からわき出た事件という側面もある。克行氏を法相に任命したことを含め安倍首相の責任は極めて重いと言わざるを得ない。[br] もう一つ目を引くのは捜査の在り方だ。当初、広島地検が案里氏陣営の車上運動員に対する違法報酬について捜査していた。捜査の過程で県議らへの現金配布のリストを押収した。[br] そこから買収事件へと発展し、東京地検特捜部が捜査を引き継いでいる。いわば検察総力を挙げての取り組みだ。これは1月に閣議決定で東京高検検事長の定年を延長したことと関係していると思われる。[br] 定年延長は露骨な政治介入であり、元検事総長らが「検察を弱体化して時の政権の意のままに動く組織にしようとしており、看過できない」と反対意見を表明したほど問題は深刻化した。[br] 危機感を強めた検察が反撃し、断固たる姿勢を見せた、と分析しても間違いないだろう。