【青森県内コロナ初確認3カ月】情報開示どこまで/行政対応を検証

青森県内1例目となる新型コロナウイルス感染者について記者会見する小林眞市長(左)=3月23日、八戸市庁
青森県内1例目となる新型コロナウイルス感染者について記者会見する小林眞市長(左)=3月23日、八戸市庁
青森県内1例目となる新型コロナウイルス感染者が八戸市で確認されてから、23日で3カ月を迎えた。当時、県や八戸市保健所の職員は、感染者の行動歴の確認や濃厚接触者の特定、PCR検査の検体搬送、病床確保など前例のない対応に追われた。一方、会見では.....
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 青森県内1例目となる新型コロナウイルス感染者が八戸市で確認されてから、23日で3カ月を迎えた。当時、県や八戸市保健所の職員は、感染者の行動歴の確認や濃厚接触者の特定、PCR検査の検体搬送、病床確保など前例のない対応に追われた。一方、会見では患者の行動歴をどこまで公表するか見極めに苦悩し、一時は市民からの問い合わせも殺到。今後、第2波の襲来が懸念される中、行政や保健所は今回の教訓をどう生かすべきか。そして、市民はどのような心構えで“新たな日常”を過ごす必要があるのか、関係者や有識者の提言から探った。[br] ▽保護と防止のはざま[br] 「感染の疑いがある患者がいる」[br] 3月22日夕、八戸市保健所に市内の医療機関から連絡が入った。市保健所は直ちに国のチェック項目に沿って聞き取りをし、検体を採取。23日朝には県環境保健センター(青森市)に検体を搬送し、同日午後7時ごろには陽性が判明した。[br] 県や保健所は発生に備えていたものの、県内初の患者に緊張が走った。特に職員らを悩ませたのは、どこまで情報を開示するかという見極めだった。[br] 感染拡大を防ぐには、立ち寄った場所や、利用した施設を広く市民に知らせる必要があるが、プライバシーも守らなければならない。市保健所の小笠原光則副所長は「情報をどこまでオープンにするのか見極めが難しかった」と振り返る。[br] 県や市の会見では、患者の容体などは比較的細かく公表したが、都内からの移動手段が新幹線であることにとどめるなど、行動履歴の開示は限定的となった。[br] 一方、翌日以降、市民からもっと情報を開示するべきだという声が相次いだことなどから、感染者の新幹線の座席番号など分かる範囲で明らかにすることに。県感染症疫学コーディネーターの大西基喜医師は「感染症に関する公表基準はあらかじめ定められているが、個人情報の保護とまん延防止をセットで考える必要がある」と指摘。市保健所の関係者もどこまで公表すべきか完全に線引きするのは難しいとの見方を示し、「状況に応じて判断するしかない」と強調する。[br] ▽疑心暗鬼[br] 県内初の感染発覚は多くの市民に衝撃を与えた。「感染者はどこに住んでいるのか」。「利用した店や病院を教えろ」。疑心暗鬼に陥った市民からの問い合わせは、職員にとって重荷となった。市保健所には連日、問い合わせが殺到し、回線はパンク。休日や夜間もひっきりなしに電話が鳴り、多い日は1日300件以上の問い合わせがあった。[br] 対応した担当者らは「こちらから電話を切ることはできないので、精神的にかなりきつかった」と心境を吐露。感染者への誹謗ひぼう中傷についても言及し、「感染することが悪ではない。それぞれが感染防止に向けて協力していかなければ」と冷静な対応を呼び掛けた。[br] ▽続く警戒[br] 今後予想される第2波、第3波をいかに抑えるか―。その鍵を握るのが一人一人の感染予防策の徹底だ。マスクの着用やうがい、手洗いの徹底、ソーシャルディスタンスの確保などこれまでの予防策の継続を心掛けることが不可欠だ。[br] ハード面やソフト面の充実も欠かせない。市や県ではPCR検査体制の強化や病床の確保、民間の宿泊施設の活用準備、高齢者施設でのクラスター防止対策などを進めている。[br] 大西医師は「体力があり行動範囲も広い若者が感染を広げてしまう懸念がある。経済を守る意味でも人の移動は避けられず、これまでの対策を継続していくことが大切だ」と提言する。青森県内1例目となる新型コロナウイルス感染者について記者会見する小林眞市長(左)=3月23日、八戸市庁