時評(6月16日)

「気候危機」が顕在化していると指摘し、経済・社会システムを変えることを求めた環境白書を政府が閣議決定した。 白書は環境省が作成したが、政府は閣議決定した以上、危機感に満ちた数々の指摘を速やかに政策に生かし、実行する責任がある。 地球温暖化に.....
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 「気候危機」が顕在化していると指摘し、経済・社会システムを変えることを求めた環境白書を政府が閣議決定した。[br] 白書は環境省が作成したが、政府は閣議決定した以上、危機感に満ちた数々の指摘を速やかに政策に生かし、実行する責任がある。[br] 地球温暖化により、豪雨被害や猛暑のリスクが高まって将来世代への影響が懸念されると強調した点が、まず目を引いた。[br] 昨年9月の台風15号や、10月の台風19号、2年前の猛暑のほか、オーストラリアの森林火災などを例示。そして人類を含む全ての生き物の生存基盤を揺るがす気候危機の段階になっていると明記している。[br] 温暖化が自然災害を頻発させ、激甚化させるとの研究は既に国内外で数多く報告されている。こうした問題提起を受けて白書は「気候変動から気候危機へ」との見出しも付けて切迫感をあらわにしたのだ。[br] 気候危機が海洋プラスチック汚染や生物多様性の損失と相互に関連しているとも指摘。環境を改善し、経済、社会が発展する「環境・生命文明社会」を提唱している。[br] 踏み込んだ白書を評価したい。だが、白書が単なるリポートで終わってはいけない。[br] 「パリ協定」に参加する70カ国以上が温室効果ガス排出量削減目標を上積みすることを既に表明している。しかし世界で5番目の排出大国でありながら日本の政府は新たな目標を国連に提出していない。[br] 欧州主要国は石炭火力発電の全廃方針を決めているが、政府は石炭火力を「ベースロード電源」と位置付ける旧態依然のエネルギー政策を一向に変えようとしない。[br] 欧州主要国も新型コロナウイルス感染症対策に腐心している。そうした中でも打撃を受けた経済・社会の再生を、脱炭素や生物多様性保全とも両立させる「グリーンリカバリー」構想を4月に打ち出した。[br] 脱炭素と経済発展を同時に実現することを目指して昨年末にまとまった「欧州グリーンディール」政策が土台。日本政府にはこうした政策を構想する考えはないのだろうか。[br] 排出量削減対策の効果が出て実際に気温上昇が抑えられるまでかなりの時間がかかるとされる。対策は待ったなしなのだ。[br] 白書は「2020年は地球環境の危機的な状況に対応する節目の年」とも書いている。政府には新型コロナへの適切な対応も求められるが、今年は政策の大転換も同時に進めるべきだ。