天鐘(6月16日)

昭和に生まれて平成を経て、令和を生きている。下の名前にも頂戴している。「和」の字に親しみを感じるのは、個人的な思い入れだけが理由ではない。やわらか、しなやか、穏やか。響きと趣がとても優しい▼日本の食文化「和食」はユネスコの無形文化遺産。素材.....
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 昭和に生まれて平成を経て、令和を生きている。下の名前にも頂戴している。「和」の字に親しみを感じるのは、個人的な思い入れだけが理由ではない。やわらか、しなやか、穏やか。響きと趣がとても優しい▼日本の食文化「和食」はユネスコの無形文化遺産。素材を生かした味わい、多種多様な調理法、もてなしの心が伝統に息づく。その本質は季節の移ろい、人々の営みとの調和とされる。まさに名が体を表している▼代表格といえば寿司や天ぷら。実際には特定の料理を指すものではないが、国民食のラーメンやカレーを含むか否かの論争もにぎやかだ。そんな中で少し影が薄いだろうか。「和菓子」も日本が世界に誇る和食である▼“五感の芸術”だという。茶席の上生菓子が分かりやすい。匠(たくみ)の技で表現された四季を目で楽しむ。楊枝(ようじ)を入れて口に運ぶと食感、風味、香りが広がる。菓銘の由来を聞いて花鳥風月に思いをはせる▼凶作続きの北の地にあって、南部せんべいは貴重な主食でもあった。農作業の合間に振る舞われる串もちが、地域の結いを支えた。秋じまいには豆しとぎを作り神前へ供えた。和菓子は風流のみにあらず、先人の知恵と風土そのもの▼きょうは「和菓子の日」。13日付の小紙が各店の逸品を紹介していた。文化遺産である以上に、生活を彩る小さな幸せである。大福、どら焼き、羊羹(ようかん)…。さて、どれにしよう。