時評(6月11日)

白人警官による黒人暴行死事件で全米に広がる抗議デモは差別撤廃を求める社会運動に発展し、デモに強硬姿勢を取ってきたトランプ大統領を窮地に追いやっている。 デモ拡大の背景には黒人差別に対する「国民意識の劇的な変化」(専門家)があるが、運動を一過.....
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 白人警官による黒人暴行死事件で全米に広がる抗議デモは差別撤廃を求める社会運動に発展し、デモに強硬姿勢を取ってきたトランプ大統領を窮地に追いやっている。[br] デモ拡大の背景には黒人差別に対する「国民意識の劇的な変化」(専門家)があるが、運動を一過性で終わらせないためには、警官の意識や組織を改革する実効性ある取り組みが必要だ。[br] 米国では白人警官による黒人暴力事件がたびたび発生。その都度、再発防止が叫ばれながら抜本的な対策は先送りされてきた。しかし、約6年前「黒人の命も大事だ」という差別撤廃運動が起こり、この問題に対する国民の共感が広まった。[br] 今回のデモは先月末の中西部ミネソタ州の黒人暴行死事件が発端だが、有名大学の調査によると「黒人差別が深刻な問題だ」とする国民は76%に達し、数年前と比べ大幅に上昇。デモを正当だとする人も約8割に上る。デモ拡大はこうした国民意識の変化を反映するものだろう。[br] デモは一部の略奪行為を除き、おおむね平和的に行われている。だが、大統領は国民意識の変化を理解しようとせず、デモを力で抑え込もうとした。ニクソン元大統領が掲げた「法と秩序」の主張をまね、軍隊の投入をちらつかせてどう喝した。[br] 特に批判が強いのは大統領がホワイトハウス周辺の平和デモを催涙ガスで排除、徒歩で近くの教会に行き、聖書を片手に記念写真を撮ったパフォーマンスだ。[br] 軍の投入や「分断と対立」をあおる大統領の言動には米軍の元幹部らが反対を表明、国民的人気のあるマティス前国防長官は「国をまとめようとしない初の大統領」と厳しく批判した。[br] 元将軍で共和党の重鎮、パウエル元国務長官は大統領を「うそつきの常習者」と呼び、11月の大統領選挙では野党民主党のバイデン前副大統領に投票するとまで明言した。[br] 大統領にとって痛いのは身内である共和党内からの批判の高まりに加え、支持基盤とする白人のキリスト教福音派の一部に離反の動きが出ていることだ。バイデン氏に支持率で後れを取っている大統領には大票田の同派の支持が死活的に重要だ。[br] だが、人種差別という米社会が抱える闇は政争や党派を超えて改善されなければならない。[br] 事件の発生地、ミネアポリスの市議会では警察組織の解体を求める動きが表面化。下院民主党も警察の改革法案を提出した。こうした流れが差別なき社会につながるよう期待したい。