11月の米大統領選挙まで半年を切り、共和党の現職トランプ大統領と野党民主党候補に内定しているバイデン前副大統領の対決に熱が入ってきた。今回は米国が新型コロナウイルスの最多感染国として苦しむ中での異例の選挙だ。[br] 最大の焦点は感染拡大に歯止めをかけ、経済の復興に導く出口戦略をどう国民に提示できるかだ。両氏は中傷合戦を激化させるのではなく、建設的で説得力ある論戦を展開してほしい。[br] ウイルスのまん延は両氏にとっても予期せぬ出来事だった。米国の感染者は約142万人、死者は約8万6千人に達したが、これほどの惨状はトランプ氏には誤算だった。[br] 同氏の再選戦略は好調な経済が頼みの綱。だが、感染拡大を阻止するための自粛規制は経済活動を一気に縮小し、株価を暴落させた。4月の失業率は14・7%で、統計を取り始めた1948年以降、最悪となった。[br] 楽観論を繰り返し、初動対応が大きく遅れたことにも批判が高まった。同氏はこうした批判を封じようとほぼ連日、記者会見を開催。中国からの入国禁止を早期に決めたことなどの成果を誇示したが、「体内への消毒薬の注射」といった突拍子もない提案をして逆に反発を買った。[br] 最近の全米平均支持率調査では、バイデン氏の50%に対して41%、などと後れを取り、激戦州でも劣勢だ。いら立って選対本部長を怒鳴り付けたと報じられるなど焦りは募る一方。何とか経済を元に戻そうと躍起だが、思うようには進んでいない。[br] だが、トランプ氏が逆風にさらされているとはいえ、バイデン氏が絶対的な優位を確保しているとは言い難い。同氏は4月、予備選挙を争ってきたライバルが撤退を決めたことから事実上、党の候補に確定。オバマ前大統領らの支持表明を得て、挙党体制を確立した。[br] しかし、ウイルスのまん延で、選挙運動は東部デラウェア州の自宅からネットを通じた発信が中心。テレビに取り上げられることも少なく、存在感が薄い。トランプ氏のコロナ対応を批判はしているが、熱気があまり伝わらず、国民にアピールする行動が急務となっている。[br] 選挙戦は8月の両党の党大会以降に本格化するが、バイデン氏は近く副大統領候補に女性を指名、攻勢に出たい意向だ。[br] 勝敗のカギは有効な感染拡大防止策や経済復興への出口戦略を示し、国民を説得する指導力をいかに見せつけることができるかだ。両氏の実のある論戦を期待したい。