時評(4月7日)

約120年間、ほとんど変わらなかった民法の契約など債権に関するルール(債権法)が抜本的に見直され、4月1日に施行された。 社会生活の変化に対応し、一般市民にも分かりやすくなるよう、法案段階から検討が重ねられてきた。影響の大きな改正だけに、今.....
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 約120年間、ほとんど変わらなかった民法の契約など債権に関するルール(債権法)が抜本的に見直され、4月1日に施行された。[br] 社会生活の変化に対応し、一般市民にも分かりやすくなるよう、法案段階から検討が重ねられてきた。影響の大きな改正だけに、今後も政府や司法関係者を中心に、市民への周知と実務への定着に努めてほしい。[br] 債権法は1896(明治29)年の制定。改正の内容は大きく二つに分けられる。第1は既存ルールの現代化だ。[br] 権利を一定期間使わないでいると権利消滅の法的効果が生まれる消滅時効は、その期間が飲食代は1年、診療費は3年などと業種で違っていた。しかし原則的に「請求できると知った時から5年」に統一された。[br] また、借金した場合の法定利率は年5%から3%に引き下げられ、しかも3年ごとに見直されることになった。[br] 借地・借家など賃貸借の期間は長くて20年だったのが50年に延長された。大型プラントの場合は長くするなど、産業界の要望に沿った変更と言える。[br] 第2は基本ルールの新設と明確化だ。鉄道の事業者と乗客ら不特定多数の人々との定型取引などに用いられる画一的な定型約款について初めてルールが決められた。事業者が用意したものに異議なく合意すれば、そこに書かれた個別条項にも合意したとみなされる。[br] 保証にも初のルールが設けられた。個人が事業用融資の保証人になる場合、公証人による保証意思確認の手続きをしていない保証契約は無効となる。安易に保証人になり、多額の借金を負わされる事態を防ぐためだ。[br] トラブルが多い敷金については、借家人が家賃を滞納した場合、家主は敷金から返済を受けることができると明記した。[br] こうした債権法の改正と同時に民法の相続に関する改正も4月から一部が施行されている。配偶者居住権の新条文だ。[br] たとえば夫が妻に家屋を相続させるとの遺言を公正証書にして残した場合、他に家屋の相続人がいても妻は最低6カ月間、無料で使える。配偶者の処遇を手厚くする制度であり、今後どこまで定着するか注目される。[br] この関連で法務局が遺言を預かる遺言書保管法が新たに立法された。これは7月施行予定で民法関係の見直しは続く。[br] 市民にとって民法は最も基本的な、生活絡みの法律だ。社会変化に敏感に対応するルールにしなければならない。常にもっと身近に。それが市民の願いだ。