【新型コロナ】本紙記者ルポ/感染拡大「異常事態」続く東京

江藤拓農林水産相の閣議後会見。記者席は2メートル間隔に配置されるなど厳戒態勢が敷かれた=3日、東京都内
江藤拓農林水産相の閣議後会見。記者席は2メートル間隔に配置されるなど厳戒態勢が敷かれた=3日、東京都内
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、夜間や週末の外出自粛を求められる東京都内。他の首都圏や関西などの自治体も上京を控えるよう住民に呼び掛けるなど「異常事態」が続く。政府は7日にも「緊急事態宣言」を出す方針。緊迫感が高まる都内では、既に街を行.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、夜間や週末の外出自粛を求められる東京都内。他の首都圏や関西などの自治体も上京を控えるよう住民に呼び掛けるなど「異常事態」が続く。政府は7日にも「緊急事態宣言」を出す方針。緊迫感が高まる都内では、既に街を行き交う人がまばらになり、余波は記者の取材現場にも及ぶ。「ビジネスの常識が変わってしまう」。急激に進むテレワークには戸惑いの声が漏れる。[br] ガタン、ゴトン、キィーッ―。朝の地下鉄に揺られていると、最近やけに走行音が気になる。換気用に窓があちこち開けられているためだ。これだけを取っても、今の東京が普通ではないと気付かされる。[br] 都内でも屈指の混雑ぶりで知られる記者の通勤路線は、ピーク時の約200%という乗車率から一転。最近は、乗客が折りたたんだ新聞を片手に読みふける。ただ、すいているとはいえ、車内の座席に空きはない。これまで通り通勤する人たちの姿も見られ、これが日本人の勤勉さを表すとすれば、皮肉なものだ。[br] 換気をはじめとする対策は、至る場面で定着しつつある。密閉された屋内の喫煙所は、法改正や都条例の施行も手伝い続々と閉鎖。食堂の中には客同士の密接・密集を避けるため、座席を間引いて設置する所も。「三つの“密”を避けて」。小池百合子都知事が会見で度々訴えている点だ。[br] 最も分かりやすい影響は街の人出だ。大手広告代理店などのビルが林立するオフィス街の汐留。最寄り駅では朝の乗客が3割減ったといい、電機メーカーの男性営業社員(28)は「うちは普段3千~4千人が働いているが、今は1割も出社していない。毎日が土日のような感じかな」。ただ、その男性も群馬県からの新幹線通勤。東京方面への移動自粛は一筋縄でいかないらしい。[br] 「コロナ禍」は取材現場にも押し寄せる。3日の農林水産省。通常は椅子で埋まった省内の会見室で閣議後会見に臨む江藤拓農水相だが、この日から広々とした講堂に場所を移した。出席にはマスク着用と入室前の検温が必須。2メートル間隔で置かれた椅子に腰を掛けると、江藤農水相は「食料品は十分な供給量を確保している」と強調した。[br] ただ、部屋が広い上にマスク越しの声は聞き取りにくい。「困ったな」。帰りのエレベーターでこぼしそうになると、目の前に「感染予防のため会話はご遠慮願います」との張り紙が。厳戒態勢下では、ため息にすら気を遣う。[br] 振り返ると、潮目が変わったのは、3月25日の都知事会見だったかもしれない。ロックダウン(都市封鎖)への警戒感が伝わるや否や、都内のスーパーからは一時的に商品が消え、中小企業でもテレワーク導入が加速し始めた。「コロナ後はいろいろな意味で、世界やビジネスの常識が変わる」と指摘する、ある企業幹部。数十年先に思い返した時、分岐点は新型コロナウイルスにあったと言われるのだろうか。江藤拓農林水産相の閣議後会見。記者席は2メートル間隔に配置されるなど厳戒態勢が敷かれた=3日、東京都内