時評(6月2日)

新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が全面解除されてから1週間が経過した。この間に、北九州市、東京都で新たな感染者が増加傾向を示すなど気掛かりな兆候はあるが、西村康稔経済再生担当相は31日の記者会見で、現段階での宣言再指定は否定.....
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 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が全面解除されてから1週間が経過した。この間に、北九州市、東京都で新たな感染者が増加傾向を示すなど気掛かりな兆候はあるが、西村康稔経済再生担当相は31日の記者会見で、現段階での宣言再指定は否定した。[br] ただ、西村氏が指摘するように「ウイルスはどこに潜んでいるか分からない」のが現実だ。解除後を単純に「以前の日常が戻る」と捉えるのではなく、むしろ「懸念される第2波以降への準備期間」と位置づけることが必要だろう。[br] 北九州市では5月29日、新たに26人の感染者が確認され、北橋健治市長は「第2波のまっただ中にいると認識している」と危機感をあらわにした。東京都も同日、感染者が新たに22人報告されたと発表。政府の専門家会議は29日の会合後、「一部の地域では感染再燃の傾向が見られる」と警鐘を鳴らした。[br] 一方で経済活動の再開への期待も大きい。多くの道府県は6月1日時点で全ての業種に対する要請を解除する予定か既に解除済み。厳しい休業要請を実施していた東京都も1日には緩和措置を第2段階に進めた。[br] 商店やデパートをはじめとする商業施設や、飲食店、学習塾、劇場や映画館など幅広い対象業種や施設の再開で経済活動が本格化するに当たっては、感染拡大の防止策は徹底されなければならない。[br] 組織、団体、個人を問わず幅広い分野で、政府が推奨する「新しい生活様式」を実践することが基本中の基本になるだろう。同時に、第2波、第3波に備え全国知事会が求めているPCR検査の強化、ワクチンの早期実用化も必要だ。[br] 懸念されるのは季節的な要因だ。屋内で過ごすことが多い梅雨を迎え「3密」の回避が難しくなることも予想される。気温上昇に伴いマスクが熱中症を引き起こす恐れも指摘されている。[br] 国や自治体が実施する災害対策を示した防災基本計画について、政府は5月末の改定で、避難所の過密を抑えるなど「感染症の観点を取り入れた対策が必要」と明記した。国や地方が連携し、実効性のある基盤整備を進めてもらいたい。[br] 政権は黒川弘務前東京高検検事長を巡る問題などで野党の追及を避けたい思惑もあり17日に会期末を迎える今国会を延長せず閉幕させる方針だ。だが、感染状況の変化に即応した立法が必要となる局面も予想される。むしろ会期延長し即応態勢を取るべきではないか。