「負けない。」花火師・野村さん(十和田)花火プロジェクトに思い

「見る人に活力を与えたい」。使命感に燃える花火師の野村孝さん=1日、八戸市
「見る人に活力を与えたい」。使命感に燃える花火師の野村孝さん=1日、八戸市
1日夜に全国一斉に行われた「Cheer up(チア―アップ)! 花火プロジェクト」。八戸会場を担当した十和田市の花火会社「青森花火」の花火師・野村孝さん(39)は、打ち上げを終えると、晴れ晴れとした表情で夜空を見上げた。新型コロナウイルス感.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 1日夜に全国一斉に行われた「Cheer up(チア―アップ)! 花火プロジェクト」。八戸会場を担当した十和田市の花火会社「青森花火」の花火師・野村孝さん(39)は、打ち上げを終えると、晴れ晴れとした表情で夜空を見上げた。新型コロナウイルス感染拡大の影響は、花火業界を直撃し、各地の夏の風物詩が次々と中止に追い込まれている。花火師としての仕事は現在、ほぼゼロに近い。「花火は生きる活力を与える」。久々に聞く歓声の余韻に浸り、仕事の喜びをかみしめていた。[br] 十和田市で生まれ育ち、高校卒業後に市内外での仕事を経て、6年前に同社へ入社。花火師として、各地の花火大会を担当してきた。[br] 花火は、見る人の思い出に刻まれる一大イベント。責任感は年々強くなった。何度打ち上げても、花火大会当日は「本当にうまくいくのか」と足が震えるという。緊張から解き放ってくれるのは、最後に響く歓声と、見る人たちの笑顔だ。「去年の自分を超えることが、お客さんを楽しませることにつながる」。期待に応えるため、精進を忘れない。[br] 花火師として自信を深めてきた中で、かつてない苦境に直面した。新型コロナウイルスの影響で、3月以降は、仕事のキャンセルが相次ぎ、瞬く間にカレンダーはほぼ白紙になった。花火大会以外にも、学校行事などの開幕を告げる「信号雷」も請け負ってきた。昨年は約300発あった依頼が、今年はわずか2発へと激減した。[br] 県内でも感染者が確認される度に、恐怖や絶望感に襲われた。例年なら7~9月で年間売り上げの7割を稼ぐが、今年の見通しはまったく立たない。「明日さえ見えない世界で、花火なんて打ち上げることはできない」。日々思い悩んだ。[br] 吉報が届いたのは4月下旬だった。仲間から花火プロジェクトの話を持ち掛けられ、すぐに参加を表明。「見る人に感動を与えたい」と花火師としての原点を思い出した。[br] 迎えた本番。1日夕方から会場となる八戸市の新井田公園で協力者らと準備に当たった。[br] 医療従事者に感謝を示す青―。心を癒やす赤やオレンジ―。午後8時を迎えた八戸の空は、さまざまな色の「優しいメッセージ」で染まった。 打ち上げはわずか25発と少なかったが、1発1発に感染収束の願いを込めた。「思いは届けられたかな」と野村さん。「いつもの花火よりきれいに見えた。久しぶりの音と光に興奮したし、とにかく楽しかった」。誰よりも励まされたのは自分自身だったのかもしれない。「見る人に活力を与えたい」。使命感に燃える花火師の野村孝さん=1日、八戸市