時評(6月28日)

青森県内で3月に新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されてから、約3カ月が経過した。米軍三沢基地で感染が伝えられたものの、5月7日を最後に新規患者の報告はない。 県内では27人が感染(6月27日現在)。高齢者施設でクラスター(感染者集団).....
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 青森県内で3月に新型コロナウイルスの感染者が初めて確認されてから、約3カ月が経過した。米軍三沢基地で感染が伝えられたものの、5月7日を最後に新規患者の報告はない。[br] 県内では27人が感染(6月27日現在)。高齢者施設でクラスター(感染者集団)が発生し、感染症指定医療機関での院内感染も起きた。関係者の尽力によって市中感染や医療崩壊を招く事態には至らなかったものの、教訓を第2波への備えに生かすべきだ。[br] 患者の半数に当たる14人は上十三地域で発生した。十和田市内の認知症グループホームに入所する高齢者と職員の計9人が、十和田市立中央病院に入院。その後、感染症病棟で働く看護師4人、さらに看護師1人の夫が感染した。感染症が直接の要因ではないが、高齢者1人が入院中に死亡している。[br] 病院が最も対応に苦慮したのは、患者が認知症の高齢者だったことだ。症状は比較的に軽かったが、介助に多くの時間を要した。一時は防護具が不足し、消毒しながら再利用したことも。これらが院内感染の要因になった可能性があるという。[br] 病院は看護師1人当たりの患者との接触時間を短くして感染リスクを低下させようと、感染症病棟に院内の4分の1の医療スタッフを投入。一般2病棟を閉鎖するなどの対応をとった。[br] 感染防止の観点から、早い段階で健診センターを休止。人手不足から、緊急性の少ない救急や外来の受け入れを制限した時期もあった。その結果、4、5月の医業収入は前年より20%(約2億円)も減少した。[br] 新型コロナへの対応は「想定外の事態」(丹野弘晃・病院事業管理者)の連続。感染症指定医療機関の責務を果たすべく、中核病院として担ってきた一部機能を引き替えにした格好だ。[br] 通常診療を維持しながら、いかにして感染症診療に当たる態勢を構築するのか。病院の事後検証によると、動線の工夫など具体的な方策が見えてきたという。受け入れ態勢の在り方を考え、必要な医療機器・用品の配備を進めるなど、経験を今後に生かしたい。[br] 病院が試行錯誤を重ねて感染を封じ込め、市中への拡大を防いだ一方で、クラスターも院内感染も県内で初めてのケースであり、市民の動揺は大きかった。病院職員への差別的な言動もあったという。[br] 十和田の事例は、他の地域でも直面する可能性がある。医療機関も、われわれ市民も、経験から学ぶことがあるはずだ。