日本の国際捕鯨委員会(IWC)脱退に伴い再開された商業捕鯨で、今年の八戸沖での沿岸操業が本格的に始まった。深刻な漁獲不振に沈む八戸市の水産業界。新型コロナウイルスの影響も心配される中、ミンククジラという新たな品目が定着することに、期待を寄せる市場関係者は少なくない。[br] 八戸沖の商業捕鯨は昨年10月下旬~11月上旬、千葉県に本社を置く捕鯨会社が実施したが、しけなどのため4日間しか出漁できず捕獲もゼロ。この時期は水産庁が手掛けた調査捕鯨のデータがなく、試験操業的な意味合いが強かった。[br] 今回は過去の調査捕鯨の実績(一昨年5月・33頭、昨年5月・27頭)を踏まえ、ミンククジラの群れが太平洋沿岸に姿を見せる春先に照準を合わせた。操業は5日から宮城県石巻市の鮎川港を拠点に始まり、3事業者が小型捕鯨船4隻で船団を組み出漁。11日にはミンククジラ3頭が水揚げされ、鯨肉は13日に八戸の市場でも販売された。[br] 八戸沖の操業はその延長だ。船団は宮城県沖から魚影を追って北上し、17日に八戸港へ拠点を移した。[br] 商業捕鯨撤退から30年余。久々の本格操業だけに課題もあるだろう。まずは漁模様。餌のイワシやコウナゴの状況のほか、しけにも左右される。宮城県沖では12日以降に漁獲がなく、事業者は予定を1週間以上も早めて八戸入りした。今年の捕獲枠100頭のうち、八戸沖だけで40頭を目指すという。[br] 販売の面では特に、若い世代の捕鯨に対する意識の変化が指摘される。八戸は藩政時代から続く鯨漁の歴史を持ち、学校給食で鯨料理が提供された時期もあった。しかし、近年は鯨肉が食卓から縁遠くなった感が否めず、市内のある学校関係者も「かつてクラスの大半が捕鯨賛成だったものの、最近は反対の生徒が増えた」と打ち明ける。[br] 昨年の八戸港は記録的な不漁に見舞われ、今年に入ってからも回復にはほど遠い状況が続く。4月には同港所属の中型イカ釣り船の廃業が明らかになるなど、漁業環境は厳しい。[br] 新型コロナウイルスも大きな不安材料だ。市場関係者によると、飲食店の営業自粛などに伴う需要減で鮮魚を中心に浜値が伸び悩んでいるようだ。[br] ただ、こうした中でも八戸は鯨肉に一定の需要があり、市場にとっても継続的な取り扱いが見込める品目が加わるのは望ましいはずだ。一連の新たな動きが低迷する“ハマ”の復活に貢献するよう願ってやまない。