2015年11月に全焼した八戸市鮫町の蕪嶋神社の新社殿が竣工(しゅんこう)し、3月下旬から一般開放が始まった。今月17日には「蕪島物産販売施設(愛称かぶーにゃ)」がオープンすることになっており、東日本大震災以降、展開してきた蕪島地区の復興事業が一区切り付く格好となる。[br] 11年3月の大震災で、蕪島周辺は5メートル超の大津波に襲われ、漁業施設や水産加工場などが被災した。標高十数メートルの島の頂上に位置する同神社は被害を免れたものの、その4年8カ月後に焼失。県内有数の観光地での火災が市民らに衝撃を与えた。[br] 社殿再建に当たっては、16年11月、蕪島がウミネコの繁殖地として国の天然記念物に指定されていることに配慮して工事を開始。ウミネコの繁殖期である4~8月上旬を除いて工事を進めてきた。新社殿は2階建てで、延べ床面積は以前の2倍となっており、ケヤキや青森ヒバ、南部アカマツなどの木材を豊富に使用。「令和」の新時代にマッチした“八戸のシンボル”へと生まれ変わった。[br] 一般公開初日となった3月26日以降、参拝客が次々と訪れ、家内安全や地域の発展を祈願している。世界中にまん延する新型コロナウイルスの早期終息を願う姿も見られる。[br] 一方、震災からの復旧・復興を巡っては15年4月、神社参道入り口付近に新設された「蕪島休憩所」が供用開始。18年7月には遊歩道や広場などを備えた「蕪島プロムナード公園」がオープンし、三陸復興公園やみちのく潮風トレイルの“北の玄関口”にふさわしい空間づくりの役割を果たしてきた。[br] 間もなく開設される物販施設は、地元関係者が立ち上げた団体が飲食などのサービスを手掛けることになっており、鮫町の活性化も図られるだろう。同施設の完成によって一連の整備事業が完了することになる。[br] せっかくの節目を盛大に国内外に発信したいところだが、現在は新型コロナウイルスの感染拡大防止のための自粛ムードが続く。ただ、流行の終息、または一定のめどが付いた時には全国の観光地がPR合戦になる可能性が高く、われわれの地域も埋没しないようにしたい。[br] 特に観光関連業は今回、打撃の大きい分野の一つとされる。八戸市内でも複数の感染者が出ており、関係者が一堂に会して対応策などを協議するのは難しい現状だろうが、ITの活用など工夫をこらしてこの危機をなんとか乗り越えたい。将来の復活につながるよう、今からしっかりと準備してほしい。