時評(5月1日)

新型コロナウイルス対策として、1人一律10万円給付を柱にした総額25兆6914億円の2020年度補正予算が参院で可決、成立した。早期支給に向け与野党が協力、衆参両院の予算委員会審議が祝日も含め計3日間というスピード処理だった。 国会審議では.....
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 新型コロナウイルス対策として、1人一律10万円給付を柱にした総額25兆6914億円の2020年度補正予算が参院で可決、成立した。早期支給に向け与野党が協力、衆参両院の予算委員会審議が祝日も含め計3日間というスピード処理だった。[br] 国会審議では政府が当初検討した減収世帯への30万円給付から、公明党などの「圧力」を受けて一律10万円給付に方針を変え、補正予算案の閣議決定をやり直した経緯を野党側が追及。安倍晋三首相は「混乱を招いたのは私自身の責任」と陳謝した。[br] 野党側は、首相主導で決めた全世帯への布マスク配布に関し、発注先選定の不透明さを指摘したほか、ウイルス感染の有無を調べるPCR検査の数が諸外国と比べ極端に少ない問題でも政府の対応を批判した。[br] 一方で、「首相攻撃」の先鋒(せんぽう)だった立憲民主党の枝野幸男代表が衆院予算委で、必要なコロナ対策には「協力を惜しまない」と強調。(1)休業に協力する事業者の家賃負担軽減(2)1兆円の自治体向け臨時交付金の大幅増額―など具体的な提案を行う姿には驚かされた。[br] 事業者の家賃を巡っては、支援する法案を野党5党が衆院に共同提出。自民党の岸田文雄政調会長も予算委で負担軽減を求めたため、首相は前向きに検討する意向を示さざるを得なかった。[br] 補正予算に盛り込まれた中小企業や個人事業主向けの「持続化給付金」については、野党側が追加支給を要求。首相は感染が長期化するなら「間髪入れずに対応したい」と応じるなど、政府と野党の間で議論がかみ合う場面もみられた。[br] 逼迫(ひっぱく)する医療現場への財政支援の増額などを求めた、野党提出の組み替え動議は、与党の反対多数で否決されたが、政界では早くも第2次補正予算案の必要性を指摘する声が出始めている。今後の追加対策では、既に設置されている政府と与野党の連絡協議会の場で、どういう中身にするか吟味すべきだろう。[br] そもそも一律10万円給付は野党が主張していた案だった。政府が当初受け入れを拒んだ背景には、旧民主党政権を「悪夢」と誹謗(ひぼう)してきた首相のメンツがあったような気がしてならない。[br] しかし、5月6日が期限の緊急事態宣言が延長される方向になり、国民に一層の辛抱を求める見通しの中、体面を気にしているいとまはない。感染症対策の専門家や自治体との意見交換は無論不可欠だが、野党の提言にも耳を傾ける度量が必要ではないか。