時評(6月9日)

コロナ禍対策のための本年度第2次補正予算案が国会審議入りした。32兆円と空前の規模で、1次補正と合わせた総額58兆円を家計や事業者、学生などの支援に投入する。医療や経済、雇用の下支えを期待したい。 その一方で、10兆円予備費に加え、不透明な.....
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 コロナ禍対策のための本年度第2次補正予算案が国会審議入りした。32兆円と空前の規模で、1次補正と合わせた総額58兆円を家計や事業者、学生などの支援に投入する。医療や経済、雇用の下支えを期待したい。[br] その一方で、10兆円予備費に加え、不透明な民間委託費が次々と表面化。破綻寸前の財政下にあって、過去最大を誇示する予算に無駄はないのか、厳しく問われるべきだ。[br] 2度の補正は全額国債発行で賄う。この結果、当初予算と合わせた本年度予算160兆円のうち、90兆円は新たに国民に付け回す借金だ。過去最高と見込んだ税収も今後大幅な減額修正が必至で、国債発行はさらに増える。借金が1千兆円に膨れ「出血」が止まらない財政にとって、コロナ禍の衝撃は致命傷になりかねず、放置できない。[br] 麻生太郎財務相は今後の対応に関し「増税に頼らず、景気回復によって税収が伸びることを目指す」と言う。経済の長期停滞が見込まれる中で、余りに現実離れした発言だ。課題に向き合わずに逃げ切りたいのだろう。国庫の惨状が周知された今こそ、停滞していた財政改革の仕切り直しに着手すべきだ。[br] 財政が持つ、公共サービス提供、所得再分配、一時的景気対策の3機能に照らせば、真っ先に改めるべきは、成長戦略を理由にした歯止めなき放漫財政だ。当初予算は、国債償還用の前年度の剰余金まで流用し歳出を増やした結果、消費税率を引き上げたのに、財政収支は悪化した。規律が保たれていれば、緊急事態対応にも財政に余力は残っていたはずだ。戦略なきばらまきでは、成長戦略にも効果が薄いのは当然のことだ。2次補正で問題化した巨額の予備費や、民間丸投げの業務委託費は緩み切った財政の象徴だろう。[br] 公共サービス改革も課題だ。国家安全保障の強化に比べて、暮らしの安全網は手薄で、即応力に欠けることが今回の事態で露呈した。感染症の常態化を想定すれば、ベーシックインカム(最低所得保障)導入も検討に値しよう。緊急時にも生活不安がしのげ、スペインはコロナ禍で限定的導入を決めた。給付金申請など行政窓口や学校授業などはオンライン化がまだ遅れている。生活変容に対応して、歳出のあり方も見直すべきだ。[br] 基礎的財政収支の25年黒字化目標も大幅修正が迫られる。赤字が急膨張した現状では増税論議がセットとなろう。その際には所得再分配で格差是正を図るよう、高額所得者の累進税率を高める税制改革が必要だ。