今年は行楽地への旅行を控えざるを得ない、様変わりした大型連休になっている。[br] 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府の専門家会議が人との接触8割削減を提言し、飲み会や帰省をオンラインで行うなど「10のポイント」を示した。これに従うと、ほぼ自宅で過ごすしかないが、危機を乗り越えるためここは「我慢の一手」だ。[br] 感染者は総数で1万4千人、死亡者も400人を超えた。政府が緊急事態宣言を出した7日から3週間で感染者は3倍にもなった。[br] 専門家会議は宣言前、人との接触を8割減らせば、爆発的な感染に歯止めがかけられると試算していた。[br] しかし、宣言後の人の動きを見ると「データからは人の流れの8割削減は達成されていない」という。首都圏の主要な駅では人の数が7~9割程度減少しているが、地方都市では5割にいかないところもある。[br] このような状況を踏まえ、専門家会議が要請したのが10のポイントだ。「ビデオ通話でオンライン帰省」「飲食は持ち帰り、宅配も」「筋トレやヨガは自宅で動画活用」などが並ぶ。[br] 大型連休は例年、各地の観光地や行楽地にどっと人が繰り出し、大移動する。これが起きると当然、感染も拡大する。[br] 全国知事会長は、大型連休中に地方での感染拡大が懸念されるとして、国が管理する道路の規制などの措置を講じるよう求めた。一律の規制は難しいかもしれないが、各自治体が警察と協議して多い人出が予想される箇所を規制することは可能だ。[br] さらに東北と新潟などの県知事らは県境を越える外出、感染者数の多い首都圏や関西への移動も控えるように求める共同宣言を出している。[br] 連休中はオフィス、工場が長い休みに入る。これまでテレワークができず、やむを得なく出社していたサラリーマンも通勤電車に乗らなくてもすむ。せっかくの休日だが、接触8割削減実現の好機でもある。[br] 今回の感染危機に当たり旧東ドイツ出身のメルケル独首相は「移動の自由を苦労して勝ち取った私のような者にとって(外出制限は)絶対に必要な場合しか正当化されない。しかし今、命を救うためには不可欠だ」と訴え、国民の支持、共感を得た。[br] パンデミックに国境はない。感染症との闘いが人類の歴史だったことを考えれば、その教訓を踏まえ科学的な根拠に基づき冷静に対応しなければならない。