時評(4月10日)

介護が必要になった高齢者を社会全体で支える介護保険が創設されて4月で20年を迎えた。今ではなくてはならない制度として定着した一方で、介護人材の不足や財源の確保など課題が山積しているのが現状だ。 このままでは制度の持続可能性が危ぶまれる。団塊.....
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 介護が必要になった高齢者を社会全体で支える介護保険が創設されて4月で20年を迎えた。今ではなくてはならない制度として定着した一方で、介護人材の不足や財源の確保など課題が山積しているのが現状だ。[br] このままでは制度の持続可能性が危ぶまれる。団塊の世代が全員75歳以上になってサービスの需要が一気に膨らむ2025年は目前だ。従来の延長ではない抜本的な改革を求めたい。[br] 要介護認定者は当初の約200万人から約660万人と3倍以上に増えた。高齢者のほぼ5人に1人。周りを見渡せば誰かが利用しているのではないだろうか。にもかかわらず介護の現場は慢性的な人手不足に悩まされているのが実態だ。[br] 介護職の有効求人倍率は全職種の3倍近い。中でも訪問介護職は応募がほとんどない状況が続いている。原因は重労働の割には賃金が安いからだ。全産業平均と比べて月約9万円低い。[br] 国は段階的に賃金を引き上げてきたが、一向に改善の兆しは見えない。人手を確保できずに倒産に追い込まれる事業者も相次いでいる。厚生労働省の推計では25年には約34万人の介護職が不足する。これまで以上の思い切った賃上げが必要だ。[br] 財源をどう確保するかも大きな問題だ。利用者の増加で総費用は当初の年間約3兆6千億円から11兆円を超えるまでになった。25年にはさらに1・5倍前後になると予測されている。[br] これに伴って65歳以上が負担する保険料も全国平均で当初の月2911円から今では月5869円と倍増した。夫婦では月1万2千円近い。天引きされる年金の目減り傾向がはっきりしている中で、これ以上の負担増はもう限界ではないか。[br] 総費用から利用者負担を除いた半分は国や都道府県が負担する税金で、残りは40歳以上が負担する保険料で賄われている。比率を変えて税金分を増やすことも考えなければならない。[br] もちろん、費用の伸びを抑制する努力も重要だ。このため、国は最近、介護予防・日常生活支援事業に力を入れているものの順調に進んでいるとは言いがたい。柱は住民主体の支え合いだが、過疎や高齢化が進む地域では担い手を確保すること自体が難しいからだ。[br] 介護保険が目指したのは家族、特に女性が担っていた介護の「社会化」だった。だが、サービスの縮小や利用者負担の増加などで年々使いにくくなっている。老老介護や介護のための離職も絶えない。原点に立ち戻って再構築する必要がある。