時評(7月5日)

新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした、都道府県境をまたぐ移動の自粛要請が全面解除されて約2週間がたった。徐々に観光客も動き始めたが、北奥羽地方に首都圏など遠方から一気に流入するとは考えにくく、受け入れ側にも若干の抵抗感があるのが現状.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大防止を目的とした、都道府県境をまたぐ移動の自粛要請が全面解除されて約2週間がたった。徐々に観光客も動き始めたが、北奥羽地方に首都圏など遠方から一気に流入するとは考えにくく、受け入れ側にも若干の抵抗感があるのが現状だろう。[br] そんな状況下で、近隣を旅行する「マイクロツーリズム」という言葉が注目を集めている。新規の感染者がほぼ出ていない北東北3県で“近場宿泊”の動きが広がり、観光業者の経営立て直しにつながることを期待したい。[br] 新型コロナの影響で、観光業は飲食業と同様に大打撃を受けた。全国に緊急事態宣言が発令された4、5月、八戸市内の主要観光施設5カ所の入り込み客数は前年同期比56~87%減。市内の主要ホテル26施設でも、4月の延べ宿泊者数は65・7%減と大きく落ち込んだ。[br] 北東北の観光業者にとって、夏は一番の書き入れ時だ。しかし、今年は夏祭りという“ドル箱”が中止となった。客足が大きく鈍ることが予想され、苦境はさらに続きそうだ。[br] 国は観光を支援する「Go To キャンペーン」を計画しているが、実施は8月頃からの見込み。さらに首都圏では新規感染者が再び増加傾向に転じており、先行きは不透明だ。[br] マイクロツーリズムは、星野リゾートの星野佳路代表が提唱する観光方式。近場を巡る観光を強化して需要を回復させれば、再び感染が拡大して往来が控えられる事態になったとしても、「いずれ旅行客が戻る自信になり、資金繰りのめどが立ってくる」と説く。[br] 北奥羽地方は好条件がそろっているといえよう。北東北3県ではこの1カ月、ほとんど新規感染者が確認されておらず、人の行き来によって感染が広がる危険性は比較的低い。車で移動しやすい上に、夏場に見頃を迎える景勝地が数多く存在する。県や市町村による宿泊費助成などの支援制度も出そろってきており、割安に宿泊できる点も大きな魅力だ。[br] 「新しい生活様式」が求められる中にあっても、大前提となるのはやはり「おんでやぁんせ」の精神。感染防止対策をしっかりと講じた上で、観光客に再び足を運んでもらえるよう、おもてなしを提供すべきだ。[br] 併せて、夏祭りに大きく依存する現状からの脱却を目指し、地域の魅力を幅広く発信したい。マイクロツーリズムによる交流とともに、観光再興の推進力になるはずだ。