時評(7月3日)

政府が新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し、新たな組織に衣替えする。閣僚会議の下に新設する分科会に移行させるという。政府は「対策は専門家に聞いた上で決めた」と繰り返してきた。今回の措置について具体的な説明はなく、唐突感は否めない。 世.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 政府が新型コロナウイルス対策の専門家会議を廃止し、新たな組織に衣替えする。閣僚会議の下に新設する分科会に移行させるという。政府は「対策は専門家に聞いた上で決めた」と繰り返してきた。今回の措置について具体的な説明はなく、唐突感は否めない。[br] 世界規模での感染拡大が続き、日本国内でも「第2波」が強く懸念されている。新組織での議論や今後の対策は極めて重要だ。経済活動を優先するあまり科学的で公正な知見や見解が軽視されてはならない。[br] 専門家会議は国内での感染が広がり始めた2月中旬に設置された。その後「3密の回避」「人との接触8割減」「新しい生活様式」などを提言してきた。多くの国民が行動を自制した。提言を信頼したからこそ厳しい内容も受け入れたのだろう。[br] 座長、副座長ら3人は先月24日に記者会見し、「専門家会議が政策を決定しているような印象を与えた」「危機感を抱くあまり情報発信に前のめりになった」と率直に振り返った。[br] 同時刻に西村康稔経済再生担当相は別会場で会議の廃止を表明した。尾身茂副座長は1日、衆院厚生労働委員会の閉会中審査で「会議が発展的に移行することは知っていた」と語り、批判はしなかった。しかしメンバー全員に廃止方針がきちんと伝えられたわけではない。不誠実な対応と言わざるを得ない。[br] 新型コロナウイルスは依然未解明なことが多い。専門家が積み上げた議論の継続は大切なはずだ。西村担当相は改組の理由について「専門家会議の法的な位置付けが不安定だった」と述べたが、説得力は感じられない。[br] 脇田隆字座長は会見で「政府と専門家との役割分担を明確にすべきだ」とも述べている。分担や権限、責任が曖昧なままに国民への情報発信を政府から任されたとの思いがにじんだ。[br] 「正確な議事録作成に消極的な政府側とは次第に距離感が生じた」。会議のあるメンバーはこう証言している。[br] 今後は感染状況に応じて対策を変える柔軟さも必要だ。だが、これまでの貴重な経験を十分生かすべきだ。1日には政府の対策の効果を検証する会議の初会合も開かれた。新組織とはまた別の組織だ。「政治抜き」で徹底的に検証してほしい。[br] 科学者の進言を軽視して経済活動再開を優先した米国やブラジルは感染拡大が止まらない。新組織でも信頼できる科学的分析が不可欠だ。政府に都合のよい理屈を与え、責任逃れに利用される組織にしてはいけない。