時評(7月2日)

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業心理が急速に冷え込んでいる。日銀の6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業・製造業の景況感はリーマン・ショック時以来、11年ぶりの低水準に落ち込んだ。政府の緊急事態宣言は5月下旬に解除され.....
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 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業心理が急速に冷え込んでいる。日銀の6月の企業短期経済観測調査(短観)によると、大企業・製造業の景況感はリーマン・ショック時以来、11年ぶりの低水準に落ち込んだ。政府の緊急事態宣言は5月下旬に解除され、経済活動は徐々に回復しているが、景気の実態は依然として厳しいことが浮き彫りになった。[br] コロナ禍はワクチンや治療薬が開発され、世界各国に行き渡るまで終息しないとの指摘もあり、企業は長期的視点に立った経営を迫られている。[br] 日銀短観は、企業の経営状況などを3カ月ごとに調査するもので、今回は厳しい状況を示す数値が並んだ。外出自粛による個人消費の落ち込み、世界的な感染拡大で輸出や訪日外国人の減少が響き、製造業、非製造業を問わず景況感が悪化した。[br] 企業規模が小さいほど状況は厳しい。景気の3カ月後の見通しについて、大企業は製造業、非製造業ともやや改善を予想するが、中堅・中小企業は全産業でさらに悪化すると見ている。[br] コロナウイルスは感染の第1波こそ峠を越えた感があるものの、再拡大の懸念は消えていない。数年は続く危機である。今後の企業経営に当たって重要なのは、感染症がもたらした環境変化への対応を急ぐことだ。[br] 機能不全に陥ったサプライチェーン(部品の調達・供給網)の見直しだけでなく、働き方の抜本的改革も加速させねばならない。人同士の接触を極力避けるため事務業務などはオンラインに切り替わり、対面営業や接待は見直しが始まった。従来型の商慣行、ビジネス手法は通用しなくなった。[br] 短観の注目点の一つでもある設備投資計画は、国内外の経済活動の急減速を背景に中小企業などで落ち込んだ。需要減による収益悪化だけでなく、テレワーク関連などの情報通信サービス業を別にすれば、先行きへの慎重姿勢の表れともいえる。[br] 基幹産業である自動車も、公共交通機関を避けて自家用車利用が増える一方で、テレワークで外出を手控える動きが広がるなど、需要の先行きは読みにくい状況にある。[br] 今後、新たなビジネスモデルを含め、どんな新市場が生まれるか、しっかり見据えることが重要だ。1990年代のバブル崩壊時は、右肩上がりの経済がいずれ戻ると判断を誤った企業から淘汰(とうた)が始まった。コロナ禍時代も同じで、過去の経営手法にこだわる企業に将来性はなく、日本経済の発展もない。