新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が39県に続き、近畿3府県で解除された。首都圏4都県と北海道は継続したが、感染は減少傾向で5月中の解除まであと一歩だ。日本は、外国のような罰則付きの強硬策でなく、外出自粛と休業の要請で収まりつつある。[br] 対策が迷走して後手に回ったにもかかわらず、感染が縮小したのは自粛要請に人々が協力したからだ。大型連休の行楽抑制が特に効いた。根拠になった「人の接触を8割減らせば1カ月で感染は減少する」とした感染症疫学の数理モデルの妥当性がほぼ実証された。[br] 死者は各国より少なく、古典的手法による際どい成功だが、日本の対策は欠陥だらけで臨機応変さを欠いていた。検証して改善すべきだ。ウイルスはまだ身近に潜んでおり、油断すれば再燃する。実際に各国では規制解除後に感染が拡大した。[br] 当面は十分に注意し再発監視を怠ってはいけない。病院などの集団感染の早期発見で連鎖を断ち、拡大の芽を摘むしかない。3密を避ける「新しい生活様式」を浸透させ、スマートフォンのデータ解析も活用したい。[br] 診断態勢は格段に劣っていた。新型コロナは無症状も多いため把握が難しく、確認された感染者は氷山の一角にすぎない。首都圏で医療崩壊寸前に陥った4月前半はPCR検査が不足し、多数の感染者が見逃された。[br] 保健所の相談センターに電話がつながらず、救命できなかったケースもあった。市中流行で保健所を介したシステムは十分でない。かかりつけ医に相談して検査を受けられる選択肢を広げてほしい。PCR検査に加え、抗原検査が使えるようになった。感染歴を示す血液の抗体も併用し、検査の拡充が不可欠だ。[br] 感染しても軽症が大半だが、発症後7~10日で急変する恐れはある。軽症の診療は発熱初期から必要で、皆保険制度の下、開業医が広く担い、重症者は病院に振り分けるべきだ。[br] 新型コロナには謎が残る。対策は違ったが、日本や韓国、台湾など東アジアは欧米と対照的に抑えられた。未知の共通要因が絡むかもしれない。科学的解明を待ちたい。[br] 警戒しなければならないのは、秋から冬の流行だ。外出自粛や休業要請は経済や生活への打撃が大きく繰り返せない。在宅勤務など接触減を続けて予防し、治療法の進歩でコロナに強い社会にするのが望ましい。緊急事態は人々の苦難の末に解除が進んだ。成果を壊さぬよう備えを強めたい。