天鐘(5月22日)

今から41年前、法務省の伊藤栄樹(しげき)刑事局長(当時)は、ダグラス・グラマン事件の捜査状況について「巨悪は取り逃がさない」と国会答弁。“巨悪”とみなされていた元総理ら自民党中枢は震え上がった▼前段のロッキード事件で田中角栄元総理が逮捕さ.....
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 今から41年前、法務省の伊藤栄樹(しげき)刑事局長(当時)は、ダグラス・グラマン事件の捜査状況について「巨悪は取り逃がさない」と国会答弁。“巨悪”とみなされていた元総理ら自民党中枢は震え上がった▼前段のロッキード事件で田中角栄元総理が逮捕され、次は岸信介、福田赳夫ら元総理と噂される中での答弁で、「政治の圧力には屈しない」との決意表明でもあった▼伊藤氏は東京高検・検事長から検事総長を歴任。「巨悪を眠らせるな。被害者と共に泣け。国民に噓をつくな」を信条に大組織を束ね、“ミスター検察”と畏敬された。回想録『秋霜烈日(しゅうそうれつじつ)』を残し、63歳で逝った▼36年後、同じ検事長席に座っていたのが黒川弘務氏だ。出世街道を一直線、もう一息で検事総長だった。だが、世間がコロナ禍に喘(あえ)ぐ中、新聞記者との賭け麻雀(マージャン)が発覚、辞職した。何とも寂しい散り際である▼政府・与党は大顰蹙(ひんしゅく)を買った検察庁法改正案の今国会成立を見送った。埋め込んだ「特例」が“官邸の守護神”を生むカラクリだと国民に見抜かれた。その渦中の人が3密破りと賭け麻雀で呆気なく消え去るとは▼検察ナンバー2の法と社会への背信は微罪では済まないが、本筋に触れずじまいで芽が摘まれそうだ。これで民主主義の危機とも叫ばれた“巨悪”が狸(たぬき)寝入りしてしまわないか。安倍政権は守護神を育て上げる“肥沃な耕地”を依然抱えている。