韓国の総選挙で、文在寅大統領の革新系与党が圧勝し、保守系の最大野党は大敗した。[br] 新型コロナウイルスの感染が終息しない中で予定通り実施された選挙だったが、新型コロナを巡る韓国政府の対策が国際的に評価されたことが与党の勝利につながった。[br] 選挙の投票は、一般の有権者と感染の疑いがある有権者を時間別に分けて実施。投票所では、防護服を着た係員から検温を受けた有権者が、ビニール製の手袋を着用して投票した。[br] 文氏の任期途中での総選挙は政権の中間評価となり、争点は経済や対北朝鮮問題、外交などになるはずだったが、新型コロナ問題に移ってしまった。 ソウル市中心部の選挙区では、いずれも次期大統領候補として名前が挙がっていた与野党の首相経験者の争いとなったが、「新型コロナウイルス国難克服委員長」を務めた革新系与党「共に民主党」の前首相が「防疫では一流国家となった」と訴え、保守系最大野党「未来統合党」の代表を破り、当選した。[br] 投票率が66・2%と高かったのは、国民の今後に対する不安の裏返しとも言え、与党に有利に作用した。[br] ただ与党の大勝の背景には野党が失言などで自滅した面もあり、文政権は謙虚な姿勢での国政運営が求められる。[br] 対日関係は選挙戦では、主要な争点にならなかった。文政権は元徴用工や元従軍慰安婦などの問題で日本に強い姿勢を示してくるかもしれないが、対話での解決を目指すべきだ。[br] 与党候補の当選者の中には、元従軍慰安婦を支援する市民団体の前代表もいる。この前代表は、元慰安婦や元徴用工の問題を解決するための立法措置や、多国間外交を通じた人権救済に取り組みたいとしており、日韓関係がさらに厳しい局面に直面するかもしれない。[br] 南北関係で北朝鮮との融和策を進めてきた文氏は、与党の勝利を受けて対北融和政策をさらに推し進めることになろう。[br] だが野党の未来統合党から出馬した北朝鮮の元駐英公使の脱北者が、南北協調を指向する文政権を批判して当選。与野党の論戦が激しくなりそうだ。[br] 北朝鮮の対外宣伝サイトはこの脱北者を「人間のくず」と批判。また投票日前日の14日にも短距離巡航ミサイルとみられる数発の飛翔(ひしょう)体を発射した。韓国側を意識した可能性もある。[br] 米朝関係が行き詰まる中、北朝鮮の出方が不透明になっており、韓国の対北政策も難航しそうだ。