新型コロナウイルス感染拡大で自粛された米経済活動について、対策チームを率いるペンス副大統領が5月下旬に感染は沈静化するとして再開に期待を表明した一方、チームの医療専門家は規制が夏まで必要との見方を示し、混乱を招いている。[br] 感染が最悪の米国の方針は国内だけではなく、コロナパンデミック(大流行)に揺れる世界に重大な影響を与える。米政府は統一した見解を発信しなければならない。[br] 混乱の背景に再選を有利にするため経済活動の早期再開を図りたいトランプ大統領の思惑があるのは明らかだろう。 大統領にとっては再選が最優先課題。当初、「(ウイルスは)暖かくなれば奇跡のように消える」と楽観論を繰り返し、結果、初動対応が大きく遅れ、感染者、死者とも膨れ上がった。[br] しかし、再開に前のめりの大統領は4月半ば、各州向けに自粛規制緩和の指針を公表。各地の規制反対デモを扇動するような発言を連発し、知事らに「州を解放しろ」と圧力をかけた。学校再開も強く求めており、野党民主党の知事が慎重なことにいら立っている。[br] しかも大統領はウイルスまん延の第2波が起こる可能性について「全く来ないかもしれない」などと発言し「秋には戻ってくる」という専門家の意見を軽視する姿勢さえ示している。[br] トランプ大統領は3月中旬以来、連日のように記者会見を開き、コロナ対応で陣頭指揮を執っている姿をアピールしてきた。ウイルス拡大防止で遊説ができないため、テレビで生中継される会見は格好の選挙運動だ。[br] だが、会見ではメディアをフェイクニュースと非難するばかりか、専門家があきれ返る突拍子もない発言を繰り返し「かえってマイナス」(米紙)との見方も強い。[br] その例が「消毒液注射」発言だ。最近の会見で、治療法として「消毒液を体内注射してみるのはどうか」と提案。これには専門家から医学的根拠のない危険な手法と強い批判の声が上がった。[br] 不用意発言もあり、「会見を選挙運動に」という思惑に反し支持率は上がっていない。重要州で民主党候補に事実上確定したバイデン前副大統領に後れをとっているのはその表れだ。[br] バイデン氏は、大統領が劣勢挽回の時間稼ぎをするため11月の本選挙を延期する恐れがあると警戒を強めているが、コロナ危機が政治に利用されることがないよう、国民はしっかり監視していかなければならない。