時評(4月24日)

欧州は新型コロナウイルス感染拡大を阻止するため各国が国境審査を復活、市民の外出禁止や経済活動の停止などを実施し、深刻な状況が続いている。欧州連合(EU)も当初、足並みが乱れ、犠牲者が急増するイタリアからの援助要請に応えられなかった。EUは「.....
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 欧州は新型コロナウイルス感染拡大を阻止するため各国が国境審査を復活、市民の外出禁止や経済活動の停止などを実施し、深刻な状況が続いている。欧州連合(EU)も当初、足並みが乱れ、犠牲者が急増するイタリアからの援助要請に応えられなかった。EUは「発足以来、最大の試練に直面している」(ドイツのメルケル首相)中で存在価値を厳しく問われ、対応を誤れば存続の危機に陥る恐れも出てきた。EUは連帯の原点に立ち返り、全力で危機を回避しなければならない。[br] EUの行政部門、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は、欧州議会で「初期にイタリアが援助の手を必要とした時にあまりに多くの国が応えなかった。心からおわびする」と異例の謝罪をした。当初、ドイツやフランスは医薬品やマスクなどの輸出を禁止し、国境審査を復活して物流の停滞を招き、イタリアは孤立した。[br] 3月の世論調査でイタリア人の88%は欧州がイタリア支援に失敗したと回答、67%がEU加盟はメリットがないと批判した。英国に続きEU離脱を叫ぶポピュリスト(大衆迎合)政党が各国で勢いを増している。憂慮すべき状況だ。万一、EU原加盟国のイタリアにポピュリスト政権が出現してEU離脱に向かえば、その衝撃は計り知れない。[br] 元欧州委員長のドロール氏は、連帯の欠如は「EUにとって生死にかかわる危険」をもたらしたと表明。イタリアのレッタ元首相も、各国が米国のトランプ政権のように自国第一の戦略を取れば「われわれ全員が沈没する」とし、EUが「死に至るリスク」に直面していると警告。EU支持派が危機感を募らせるのも当然だ。[br] 感染防止とともに、経済活動の停止などで打撃を受けた国を救済する財政支援がEUの最優先の課題だ。イタリアやスペイン、フランスなど9カ国は、各国が負担を分かち合い財源を調達するユーロ圏共通の「コロナ債」発行を訴える。しかし緊縮財政を主張するドイツやオランダなどが負担増に反対している。ただドイツは2009年からの欧州債務危機を受けてできたユーロ圏の金融安定網「欧州安定メカニズム(ESM)」の基金を使用する支援には賛成だ。[br] フランスのマクロン大統領は、EU共同債の発行に関して「今これができなければ、イタリアやスペイン、あるいはフランスでもポピュリストが(選挙で)勝つ」と警告した。EUが英知を絞って試練を乗り越えることを期待したい。