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 2019年に終刊した青森県のタウン誌「あおもり草子」の後継誌「季刊 あおもりのき」が10日、創刊される。創刊号のテーマは八戸市ゆかりの思想家・安藤昌益(1703~62)。人と人、自然と人など、異なるもの同士が支え合って生きる社会を目指した昌益の思想こそ、新型コロナウイルスで混乱する今の社会に必要ではないか―。出版元「ものの芽舎」(青森市)代表の佐藤史隆さん(47)は「昌益の思想が、今を生きる人の力になってほしい」と思いを込める。[br][br] 「あおもり草子」は1979年創刊。40年間、地域に根付いた文化や暮らしをさまざまな角度からつづってきたが、出版元が収益の落ち込みから破産を申請した。長年編集に携わってきた佐藤さんは「タウン誌を何とか復活させたい」と、昨年末にものの芽舎を設立。現在は妻のあい佳さん(39)と2人で編集を行う。[br][br] 現在の秋田県出身の昌益は、八戸で医者として開業。天候不順とイノシシの異常発生による大飢饉(ききん)に直面し、平等思想や自然と調和した生き方を説くようになったという。その思想は多岐にわたるため、創刊号では代表的なキーワードごとに紹介。安藤昌益資料館(八戸市)の三浦忠司館長ら、昌益に詳しい人のエッセーや対談も交えた。[br][br] 創刊には、タウン誌への佐藤さんの強い思いがある。「地元の人でも知らないような小さな話題を記録し、未来へ残す。それはタウン誌にしかできないこと」。雑誌名「あおもりのき」の「き」には、「記録」や未来への「希望」の意味を込めた。 昌益の思想で特に強調したいのは、この世の全ては異質なものがお互いに依存し合って生きている―と説く「互性」という考え方だ。「昌益は生きる上での大切な意識を持っていた。苦難を乗り越えた大先輩が地元にいたことを知ってもらいたい」と話している。[br][br] 創刊号は全48ページで税込み770円。3千部を発行し、県内の書店のほか通販サイト「アマゾン」でも販売する。[br][br] 今後は3カ月に1回程度発行する予定。「あおもりのき」を創刊する佐藤史隆さん(左)と妻のあい佳さん=11月下旬、青森市