【中南米のワクチン接種】偽造、権力者割り込みなど不正横行

 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで、高官らの先行ワクチン接種に抗議する市民ら=2月(AP=共同)
 アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで、高官らの先行ワクチン接種に抗議する市民ら=2月(AP=共同)
中南米各国で犯罪組織による新型コロナウイルスワクチン偽造や、権力者によるワクチン接種の順番“割り込み”といった不正が横行している。もともと麻薬組織が暗躍する地域の特徴に加え、専門家は根強い格差や汚職などが要因となっていると指摘する。 ▽資金.....
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 中南米各国で犯罪組織による新型コロナウイルスワクチン偽造や、権力者によるワクチン接種の順番“割り込み”といった不正が横行している。もともと麻薬組織が暗躍する地域の特徴に加え、専門家は根強い格差や汚職などが要因となっていると指摘する。[br][br] ▽資金源[br] 全土に麻薬組織がはびこるメキシコの地元紙ミレニオは1月、治安当局が偽ワクチンの工場を確認したと報じた。工場は首都メキシコ市以外にも中西部ハリスコ州、北東部タマウリパス州、北部チワワ州で見つかった。[br][br] 犯罪組織の資金源とみられ、効果のない偽ワクチンの接種者が「金ばかりか命を失いかねない」(当局者)との懸念が広がる。3月にはロシア製ワクチン約5800回分に偽装した物質がホンジュラスに運ばれるのをメキシコ当局が阻止した。当局は犯罪組織が病院に搬送途中のワクチンを奪う恐れもあるとして警戒している。[br][br] 南米メディアによると同様に麻薬犯罪が多いコロンビアでは、国民向け接種が2月に始まる前に偽ワクチンなどの広告がネット上で出回った。エクアドルでは、無許可でワクチンと称した物質を患者に接種していた病院に警察の捜査が入った。[br][br] ▽特権[br] ブラジルでは医療関係者がワクチンの液体が入っていない注射を高齢者の腕に刺し、接種の「ふり」をするケースが少なくとも14件報告された。偽看護師がワクチンと称して生理食塩水を80人以上に注射したとして逮捕される事件や、ワクチンの強奪も相次ぐ。接種の優先順位が高くない有力者らが“割り込み”をしたという届け出も全国で4千件を超えた。[br][br] ペルーでは国民向け接種開始前に、当時の大統領や高官らの接種が判明。アルゼンチンでも高官やコネがある人物の先行接種が報じられ、国民の強い怒りを招いた。[br][br] ▽犠牲[br] 汚職を監視する非政府組織(NGO)トランスペアレンシー・インターナショナル・ブラジルのビニシウス・レイス研究員は、中南米で不正が横行する要因について、植民地時代に端を発する「根深い格差」により権力者が特権を当然だと考える風潮が強いと指摘。多くの国で十分に行き渡らないワクチンは“垂ぜんの的”として、悪質な汚職や犯罪を招いているとする。[br][br] レイス氏は「コロナ下で汚職は激しくなり、最も貧しく弱い人々が犠牲になっている」と懸念を示した。(サンパウロ共同) アルゼンチンの首都ブエノスアイレスで、高官らの先行ワクチン接種に抗議する市民ら=2月(AP=共同)